【下水道 この美しき世界 #2】ふた一つ隔てた異空間 東京都町田市の特殊人孔

2023年06月02日
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連載第2回
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 時に幻想的、時に無機質…。下水道写真家の白汚零さんが、普段、私たちの目に触れることのない世界を、作品とともにつづります。


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 私たちは毎日、無数のマンホールふたの上を通過している。歩きでも、車でも…。全国にある下水道用マンホールの総数は約1600万個(日本グラウンドマンホール工業会・推計値)といわれる。


 下水道には大きく分けて合流式と分流式がある。分流式は雨水と汚水を別の管で流す方式で、比較的新しい街に多い。合流式はそれらを同じ管路で流す方式だ。


 「人孔」とも呼ばれるマンホール。人や点検用カメラロボットなどが内部に下りるために設置される。地上と下水道とを隔てるふたは、その多くが直径60センチ規格で、厚さはわずか10センチに満たない。


 写真で紹介するのは、東京都町田市の特殊なマンホールだ。二つのマンホールのふたはごく近くに配置されている。ふたを開け、中をのぞき込むと、一つの四角い空間に垂直に仕切りがあり、それぞれに汚水と雨水が流れている。

汚水管と雨水管が一つの空間にある珍しい構造をしたマンホール=2014年12月、東京都町田市
汚水管と雨水管が一つの空間にある珍しい構造をしたマンホール=2014年12月、東京都町田市

 


 高台の狭い道で、二つのマンホールを別々に造ることができなかった事情や、水量がさほど多くはないことから、この形状になったようだ。分流式では通常、汚水管と雨水管は別に造られるから、とても珍しい。


 張り巡らされた下水道網は迷路のように思えるが、全て行き先が決まっている。汚水は下水処理場で浄化された後、川や海に行く。雨水は処理場を通らず直接放流されることもある。


 生活に欠かせないインフラであるにもかかわらず、その存在を意識することが少ない下水道。道路を歩く時、まずはマンホールのふたに何が書かれているか観察してみてほしい。地域の名物などがデザインされていたり、合流・分流式の区分の表記があったりと、新しい発見があるに違いない。(下水道写真家)

東京都新宿区から渋谷区を通る「千駄ケ谷幹線」のマンホールふたを下から見上げて撮影すると、太陽光が差し込んできた=2009年8月、東京都渋谷区
東京都新宿区から渋谷区を通る「千駄ケ谷幹線」のマンホールふたを下から見上げて撮影すると、太陽光が差し込んできた=2009年8月、東京都渋谷区

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 しらお・れい 1965年高知市生まれ。米スクール・オブ・ビジュアルアーツ卒。80年代から各地の下水道や管路、下水処理場などを撮影する。写真集は「地下水道 undercurrent」「胎内都市」(草思社)。

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