【5218】旦 純米(だん)【山梨県】

2023年05月31日
酒蛙酒蛙
山梨県大月市 笹一酒造
山梨県大月市 笹一酒造

【S蕎麦屋にて 全3回の③完】

 なじみのS蕎麦屋の店主から「新しいお酒が5種類入ったので飲みにいらっしゃい」というメールが入った。メールに添付された写真を見ると、5種類のうち3種類が、この連載でまだ取り上げていないお酒だった。よ~し、取材だ。張り切って店の暖簾をくぐった。

「腰古井」「紀土」と飲み進め、最後にいただいたのは「旦 純米」だった。笹一酒造のお酒は当連載でこれまで9種類を取り上げており、内訳は「旦」6種類、「猫芸者」などキワモノ的なもの3種類となっている。「旦」については、しっかりとした味わいの酒、というイメージを持っている。さて、今回のお酒をいただいてみる。

 グラスに注いだお酒は、すこし黄色く色づいている。上立ち香はしない。含み香にすこし、ナッツ系の香りが感じられる。とにかく香りは穏やか。そして口当たりはオーソドックス。

 味わいはけっこう力強い。旨みと辛みが良く出ている。すこし遅れて酸も出てくる。辛みが、味の力強さを演出しているように感じる。キリッと辛い。余韻も辛み。飲み飽きしない酒質で、食中酒に適している。派手さは無いが、メリハリがあって辛い酒質は、大相撲に例えるならば、すこし古風なキリッとした力士・若隆景か。実にいい力士だが、大怪我をしたのは残念。大型力士があまりいない昭和の栃若時代なら、とっくに大関になっている。この酒、クラシックタイプの、ミディアムボディー酒。あるいは醇酒。

 瓶の裏ラベルのスペック表示は「原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)、精米歩合60%、アルコール分16度、製造年月22.12」にとどまり、使用米の品種名が非開示なのは残念だ。

 蔵のホームページは、「旦」のコンセプトについて、以下のように説明している。

「この度、新ブランドとして『旦(DAN)』が誕生しました。日本酒の味を大きく左右する麹作りと酒母造りは手作りで行い、最新式の洗米機や乾燥蒸気を自在に出せる吟醸甑、佐瀬式と永田式の2台の酒搾り機など、高品質を実現するために必要な醸造機器は積極的に活用します。伝統的な麹菌と伝統型酵母を組み合わせ、香りと味わいの調和を何より重視し、食中酒としての日本酒の魅力を最大限に醸し出します」

 酒名「旦」の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。

「350年超の歴史を刻む酒蔵が伝統製法に立ち返り富士山の仕込水と最高の酒米で醸す、シンプルだが贅を極めた日本酒『旦』。『日の出』『はじまり』の意を名に込め、夜明けを照らす太陽のような、神々しい晴れの酒。純粋に美味い食中酒として最高の日本酒づくりに没頭すること。それが『旦』の神髄」

 また、蔵のホームページは、蔵名「笹一」の由来について、以下のように説明している。「初代蔵元である天野久が大正8年(1919年)に笹一酒造と改名、統合。その名『笹一』の『笹』は酒を意味し、『一』は酒の日本一を目指すという思いを込めて命名される」