年金給付水準50%割る恐れも 中嶋邦夫・ニッセイ基礎研究所上席研究員  視標「将来推計人口と年金」

2023年05月25日
共同通信共同通信

 6年ぶりに日本の将来推計人口が発表された。出生率が前回推計の1・44から1・36へ低下する一方、外国人の入国超過が倍増することから、現役世代人口の減少が前回推計よりも緩やかになるという、意外な結果となった。ただし、長寿化は引き続き進む。65歳以上の人口は増え、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)も、長期的には高まる見通しとなっている。

 現在の年金制度では、現役世代が負担する保険料が据え置かれる代わりに、年金財政が健全化するまで給付の実質的な削減が続く。

 前回推計を基にした2019年の公的年金の財政検証では、現役世代の手取り収入と比べた給付水準(所得代替率)が将来的に50・8%へ下がるものの、政府が04年の年金改革で約束した50%を確保できるとの結果となっていた。

 24年の実施が目されている次の年金財政検証には、今回の新しい将来推計人口が反映される。年金制度は国籍に関係なく適用されるため、外国人の入国超過は年金財政の支え手が増えることになる。とはいえ、出生率の低下や長寿化の進行を考えれば、次回財政検証では所得代替率が50%を下回る懸念もある。

 このことは、年金の実質的な価値が現状(19年度で所得代替率61・7%)と比べて2割目減りすることを意味する。

 しかも、2階建ての年金制度のうち、会社員や公務員だった人が受け取れる厚生年金(2階部分)は1割弱の目減りにとどまるのに対し、全加入者に共通の基礎年金(1階部分)の目減りは3割に及ぶ。

 厚生年金は、現役時代の給与に応じて年金額が決まる。給与が少ないと、年金総額に占める基礎年金の割合が大きいため、給付削減の影響が大きい。さらに非正規雇用で厚生年金に加入できない場合は、基礎年金しかない上に、その減り方が大きい。

 この問題の解決に向け、厚生労働省が多様な対策案を示している。次期年金改革に向けては、これらの案が議論の中心となるだろう。

 第1は、厚生年金の対象拡大だ。基礎年金だけでは厳しい老後になるため、厚生年金の受給者を増やすのが狙いだ。16年から順次拡大されており、24年10月から社員50人超の企業で働くパート労働者へ広げることは決まっている。企業規模要件の撤廃も検討されている。

 第2は、基礎年金の保険料拠出期間の延長だ。現在の40年を45年に延ばし、それに比例して基礎年金の受給額を引き上げる。65歳までの就労が進む中、20歳から60歳までしか年金額に反映されない仕組みは時代遅れで、見直すべきだ。

 第3は、基礎年金の給付費用を賄う拠出金の仕組みを見直し、基礎年金と厚生年金の削減幅をそろえる案だ。この見直しにより、現役時代の給与が少ないほど大幅な給付削減となる弊害に対応できる。現役時代の収入や働き方、夫婦世帯か単身世帯かを問わず、同じ痛みを分かち合う形になる。

 だが、これらの改革案を実行できても、一定程度の給付の目減りは避けられない。制度改革で対応できることは限られている。少子化対策の着実な実行や、賃上げ・雇用の安定化を通じた経済社会全体の底上げも必須の課題だ。

(新聞用に2023年4月26日配信)

 なかしま・くにお 1972年福岡県生まれ。東京大卒。東洋大大学院博士(経済学)。2002年にニッセイ基礎研究所入社。
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