師を追って転校、そしてハイズマン賞獲得 南加大QBケーレブ・ウィリアムズ


昨年12月10日、ニューヨークでの「ハイズマン・トロフィー」授与式。南カリフォルニア大(南加大)の2年生QBケーレブ・ウィリアムズは、マックス・ドゥーガン(テキサスクリスチャン大QB、4年)ら3人のファイナリストを大差で抑え、栄光のトロフィーを手にした。チームに加わり1年目の快挙だった。
受賞スピーチでは、同席した南加大リンカーン・ライリー監督夫妻への謝意を熱く語った。
39歳にして名指揮官と評価される師にとっては南加大での最初のシーズン。転校1年目のウィリアムズにとっても新天地での2022年シーズンだった。
185センチ97キロのしなやかな体から正確に放たれるパスは、448回試投で66・1%の成功率をマークした。
37TD、被インターセプト4と傑出した成績を残し、走っては372ヤード、チーム最多の10TDを挙げるなど11勝2敗。カレッジフットボールプレーオフ(CFP)進出こそ叶わなかったが、師とともに低迷が続いていた名門チームを復活に導いた。
ウィリアムズは米東部で生まれ育った。首都ワシントンDCのゴンザガ高から21年、ライリー監督が指揮して5シーズン目のビッグ12の盟主オクラホマ大の門をたたく。
その第6戦、テキサス大との試合で劣勢の第2クオーターから出場し、逆転勝利に導くと正QBの座に就いた。
当時のオクラホマ大は、パス主体のテンポのいい攻撃「エアレードオフェンス」で異彩を放ち、17年からベイカー・メイフィールド(NFLラムズ)、カイラー・マレー(同カージナルス)と続けてハイズマン賞受賞者を輩出した。
3年目のジェレイン・ハーツ(同イーグルス)もファイナリストに選出されるなど、優秀なQBを育て上げる監督の抜擢に応え、21年は211回試投136回成功1912ヤード獲得で21TDパス、4回の被インターセプトで「スーナーズ」のエース、ハイズマン賞の約束手形を手にしたと報じられた。
そんな上々のルーキー年の終盤、感謝祭の全米に衝撃のニュースが走った。ビッグ12の最終戦翌日の11月28日、パック12の名門・南加大が次期監督にライリー監督の就任を発表したのだ。
10勝2敗のシーズン、5年間の通算勝率が85%の指揮官の複数年契約の途中での移籍が報じられ、オクラホマ大に激震が走った。5人のアシスタントコーチ、複数の戦力分析といった専門スタッフも南加大へ転じた。
明けて22年2月1日、ウィリアムズは全米大学体育協会(NCAA)移籍ポータルを通じ、南加大への転校を表明した。師を追っての決断。全米王者のジョージア大を含む複数校からのオファーには目もくれなかった。

全米の高校生アスリートが志望大学との入学に関する意向書に署名するナショナルサイニングデーが2月1日(現地時間)に迫った。ライリー監督2年目の23年の南加大には、各ポジションで逸材ルーキーが目白押しと言われている。
22年のラン攻撃を支えた二人の4年生RBや、エースWRジョーダン・アディソンが最終学年を前にNFLドラフトへの参戦を表明する中、ルーキーや自身同様に移籍ポータルを通じてどんな新戦力が加わるか。
3年生になるウィリアムズは、ともにオクラホマ大から転校したメインターゲットの同級生WRマリオ・ウィリアムズをパートナーに、ライリー監督が標榜する「ウエストコースト版」のエアレードオフェンスの真髄に迫る覚悟だ。
その先にはCFP進出、南加大にとっては2003~04年にかけて2連覇して以来となる12度目の全米王座が見えてくる。
ケーレブ・ウィリアムズ 2002年11月18日、ワシントンDC出身。ゴンザガ高から21年オクラホマ大に入学。22年、移籍ポータルを通じて南加大に転校、正QBとしてハイズマン賞、AP通信のプレーヤーオブザイヤーに選出された。185センチ、97キロ。

浅岡 弦 (あさおか・げん)プロフィル
1957年生まれ。駒澤大学でOG、ラインバッカーとしてプレー。卒業後はコーチ、スタッフとして活動。AFCA(アメリカンフットボールコーチズアソシエーション)元海外会員。ベースボール・マガジン社の『アメリカン・フットボールマガジン編集部』在籍中から国内学生、NCAAフットボールのレギュラーシーズン、ボウルゲームを取材。ケーブルテレビのカレッジフットボール番組のコメンテーターを長く務める。