【4965】末廣 吟 大吟醸 嘉永蔵(すえひろ かえいぐら)【福島県】


以前なじみにしていたが、6年ほど前、惜しまれながら店を閉じたY居酒屋。その元女将さんが、どういう風の吹き回しか、お酒をプレゼントしてくれた。恐縮。ありがたい。包みをあけたら、初めて目にする「末廣 吟 大吟醸 嘉永蔵」だった。当連載で、末廣酒造のお酒はこれまで、12種類を取り上げている。ちょうだいしたお酒は、自宅の晩酌酒としていただいた。
上立ち香は、メロンとナシが一緒になったような果実香が適度。含み香も同様で、華やか過ぎず、穏やか。ふくよか、まろやかな口当たり。甘みがけっこう出ており、甘みは旨みを伴うが、甘みの方を多く感じる。酸はやや少なめ。甘・旨・酸・辛・苦の味の要素はいずれも出過ぎることなく、極めてバランス良くまとまっている。余韻は苦みとかすかな酸味と渋み。大吟醸ではあるが、派手さはなく、落ち着き感が非常にある。キレも良い。クラシックタイプのミディアムボディ~ライトボディの、ミディアム寄り。言葉では表現できないが、「末廣DNA」を感じさせる香味だった。
瓶の裏ラベルは、この酒を以下のように紹介している。「厳冬期に嘉永蔵で、麹造りから仕込まで、蔵人の手により大事に大事に育てられ発酵する大吟醸。大吟醸としては控えめな香りと爽やかな口当たりです」
蔵のホームページはこの酒を「山田錦使用。大吟醸にしては派手すぎない華やかな香り。スッキリしたキレの良い大吟醸」と紹介している。また、ホームページでは、「杜氏の独り言」として、1978年から吟醸酒造りに挑戦。7年目の1985年、全国新酒鑑評会で金賞を受賞した経緯を紹介。「末廣の吟醸造りの原点がこの酒『嘉永蔵』なのです」と述べている。
裏ラベルのスペック表示は「アルコール分15度、原材料名 米(国産)米こうじ(国産米)醸造アルコール、使用米 山田錦100%、精米歩合35%、製造年月22.05、1850年創業嘉永蔵」。精米歩合35%にはすこし驚いた。ホームページではこのほか「容量/重量 0.72L/1.25kg、日本酒度 +3.0~+4.0、酸度 1.2~1.4」と開示している。
酒名および蔵名「末廣」の由来について、コトバンクは「明治初期まで問屋で符丁とした『アキナイ、スエヒロク』にちなみ命名」と説明している。