審判には両手でボールを渡しましょう どんな場面でも敬意を忘れない

2022年09月21日
共同通信共同通信
中村 多聞 なかむら・たもん
第2節で名古屋サイクロンズに42―10で快勝した電通キャタピラーズ=Xリーグ提供
第2節で名古屋サイクロンズに42―10で快勝した電通キャタピラーズ=Xリーグ提供

 

 秋のリーグ戦の第2節を終え、僕が所属するX1エリアの電通キャタピラーズは無事に全勝をキープしました。

 僕が担当するランニングバック(RB)陣も、スタッツ的には良い結果が出ていました。

 点差がつき試合の途中で勝敗が決まってしまった感があり、気持ちがたるんでしまったRB陣に、私コーチタモンは珍しくゲーム中かなり不機嫌でした。今回はそういったゲーム中の振る舞いについてお話をしてみようと思います。

 

 このコラムで何度も書いておりますが、ゲームデーは練習や鍛錬ではなくあくまでもゲームです。日頃泣きながらやっている努力の成果と今持っているチカラをしっかり発揮して楽しむ日と僕は定義しています。

 

 ただ、経験が豊富でなく未成熟な選手の場合、スコアボードに気持ちが揺さぶられますよね。でも、自分がゲームでチカラを発揮するのに、スコアボードは無関係なんです。今からやるプレーと何の関係もないのに気にしちゃう。素人あるあるです。

 

 勝利が確定して安心しているような状況下でなら、ミスをしてもチームの将来を左右するようなことにはあまり発展しませんよね。これはチームの一員なら誰でも頭の片隅にあるはずです。

 でも、みんながフットボールに懸ける思いは「勝利が確定した中での活躍」でしたか? おそらく違うはずです。

 最初から最後まで自分が大活躍しないといけない緊張感のある拮抗したゲームで、敵も味方もびっくりするような働きを見せるために頑張って、つらいことを乗り越えて来ているはずです。

 

 なので、たとえ自チームが優位になっていようと、この先のタフで長いリーグ戦を生き残っていくためにも「勝っているからリラックス」「負けているからピリピリ」と気持ちが揺さぶられているうちは二流、三流です。

 今の自分よりさらに上を目指すのであれば、ゲームの状況とは関係なく、ゲームデーまで積み上げて来た努力や実力を最初から最後まで出し続けられるように心をコントロールする。これが重要なのだという感じで電通RB陣は叱られていました。

 

 ゲームの序盤。今ミスをしたら大きな被害につながるかもしれない。だから少し速度を落として動きやすく視野を広くして様子を見ようなんてやっているうちは、タックルしてきた敵を跳ね返したり触られもせずに駆け抜けたりできるわけがありません。

 それでも相手の動きや様子が分かってきて、点差もついてからは普段の練習のように伸び伸びと躍動し、ヤードを稼いでいました。

 「前半で相手の能力や作戦を徹底的に分析し攻略、まいておいた多くの種が後半に実を結び、自由自在に暴れまくる」という、相手守備が強い時の理想的なRB用ゲームプランです。

 しかし、流れに身を任せた「手抜き仕事」は、近くで監視しているコーチタモンをごまかすことはできません。メンタルコントロールもスキルコーチの重要な指導項目ですので。

 

 これは逆の時も同様です。負けが決まってから「一矢報いてやる」と弱いチームが最高の集中力を発揮して良いプレーを連発するアレです。

 負けが決まっているのでミスは怖くありません。そのミスが原因で負けるわけではないのですから。環境に心を左右されている典型的な例ですね。

 僕の学生時代がまさにそうでしたので、この気持ちはよく理解できますが、こんな調子では一流とは言えません。その集中力で最初からやれるのが良い選手です。

名古屋サイクロンズ戦でボールを持って前進する電通キャタピラーズのRB玉田(20)=Xリーグ提供
名古屋サイクロンズ戦でボールを持って前進する電通キャタピラーズのRB玉田(20)=Xリーグ提供

 

 最後の最後まで勝敗が見えないゲームは、自分の活躍で相手の息の根を止める。「その時のために練習があって、全ての練習で点を入れることをイメージして行え(Think score on every drill)」なんて言葉が米国にはあります。とても大切な心がけです。

 

 もう一つは審判団との関係性です。リレーションシップです。審判は敵ではなく我々競技者の良き友人です。彼らがいなければ不公平で不平等、危険も多いゲームばかりになるでしょう。

 時にはジャッジに納得のいかないこともあるでしょうけれど、競技を長く続けていれば、良い判定があれば悪い判定もあります。

 彼らも間違う時があるかもしれません。それはお互いさまだし人間同士のやり取りですから、そのくらいは許容して良い関係を築くことが大切です。

 

 僕もこれだけ長くフットボール界にいますので、試合会場に行けばよく知った審判と必ず会います。「今日は雨で嫌ですね」「今日はとっても暑いですね」「お久しぶりです」なんて挨拶するだけでもいいじゃないですか。

 

 RBは出場時にはかなり高い確率でボールを持ったまま倒れます。そのボールを審判に渡して次のプレーの準備をしてもらわねばならないのですが、この時に電通のRBたちが審判を見ることもせずポーンと放り投げる行為を重ねていたのです。

 遠目から見た感じでは「ボールや、ホラよ!」と言っているように感じました。

 タモン式RB養成所では、審判への態度は良ければ良い方が良い。「毎プレー『ボールお願いします!』と目を見てお渡ししましょう」を推奨しているのですが、格好をつけてポーンとぶん投げるのです。

 

 学生さんを指導している時は「審判には両手でボールを渡しなさい」と厳しく指導していました。

 審判からもファンからも「よく頑張っているね、しっかりやれよ!」と思ってもらおうということです。お互いに気持ちよくゲームを終えることができれば、それが一番ですからね。

 

 自分の競技人生を懸けた大事な試合中に、終始愛想よく振る舞うのは難しいかもしれません。心が戦闘モードになっている時はなおさらです。しかし、どんな時も審判に対する敬意を忘れてはいけません。

 とまあ、今回はゲームでの振る舞いで目についた二つのことを書いてみました。