実名報道、やむを得ない   保護処分可能な制度維持へ   核心評論「特定少年の起訴」

2022年09月15日
共同通信共同通信

 甲府市の住宅で夫妻を殺害し、放火したなどとして4月8日に起訴(公判請求)された19歳の被告は、1日施行の改正少年法に「特定少年(18、19歳)の特例」が定められたことに伴い、新聞で実名を報じる最初のケースとなった。顔写真も掲載可能だ。起訴された特定少年の実名報道は、今後も原則としてやむを得ないと考えている。

 国会での改正法の趣旨説明によると、憲法改正の国民投票権を契機に公職の選挙権や民法上の成年(成人)がいずれも18歳以上となり、18、19歳は「責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待される立場」に変わった。少年法上もその立場に応じた取り扱いが必要なので、特定少年の特例を導入した。

 特例とは、まず家裁が検察官から送られた18,19歳の事件について、刑事裁判が相当だとして検察官に原則送致(逆送)する事件を大幅に拡大する。強盗や強制性交などが新たに原則逆送事件に加わった。

 また①懲役5年以上10年以下というような不定期刑を宣告する、②仮釈放が可能となる服役期間が20歳以上より短い、③刑の終了後、就職に影響しないよう刑の言い渡しを受けなかったとみなす―などの規定は、特定少年には適用しない。氏名や容貌などで少年の容疑者・被告らが誰なのかを推しはかられるような報道(推知報道)の禁止も、今回のように起訴後は解禁される。

 法改正の過程では、成年の18、19歳は少年法の適用外にすべきだという意見と、家裁による事件の背景調査や少年院送致などの保護処分は、更生に有効なので18、19歳を少年法にとどめるべきだとする意見が対立した。

 その結果、18、19歳の事件は従来通り、検察官から少年事件として家裁へ全て送るものの、特定少年の特例を設けることで妥協が図られた。

 少年事件の枠組みが残り、原則逆送事件でも、これまで約3分の1は保護処分などになっていることを見れば、更生を考えた家裁の裁量に期待できる制度といえよう。逆送されてきたのは「刑事処分以外の措置が適当とは認められない」(今回の事件の甲府家裁決定)と判断され、刑罰が優先された事件だ。

 「少年犯罪被害当事者の会」代表の武るり子さんは国会で、起訴後の実名報道解禁を「当然」としつつ、特定少年の制度は「18歳になったら大人で、義務と責任の自覚を持つよう学校で教育するのに、罪を犯したときだけ、未熟だから少年として扱うことをどう教えるのか」と批判した。

 改正少年法には、施行5年経過後に特定少年の制度見直しを検討するという付則がある。20歳以上と同等に扱うべきだとの批判がこの5年間に強まれば18、19歳は少年法の適用外となりかねない。

 家裁の裁量で保護処分が可能な制度を維持するには、起訴後の実名報道を含めて特定少年の特例を受け入れるしかないのではないか。

 もちろん、実名報道で性犯罪の被害者が分かるようなケースや、精神障害で刑事責任能力が完全でないことが明らかな場合などには、匿名を選択すべきだろう。

 (新聞用に2022年4月8日に配信)

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