進む「研究への患者参画」 テーマ発掘や啓発で連携 支援不足が課題

2022年10月04日
共同通信共同通信
 病気の原因や治療法を探る研究を、患者や市民の意見を取り入れながら進める取り組みが注目されている。欧米で先行して広まった「研究への患者・市民参画(PPI)」と呼ばれる動きで、国内でも患者の意見に基づいて新たな研究テーマが設けられるなどの例が出てきた。一方で、参画する患者らに対する支援の不足など課題もある。
厚労省研究班の会議で、増田靖子・全国脊柱靱帯骨化症患者家族連絡協議会会長(左)の話を聞く研究班メンバー=6月、東京都内
厚労省研究班の会議で、増田靖子・全国脊柱靱帯骨化症患者家族連絡協議会会長(左)の話を聞く研究班メンバー=6月、東京都内

 

 ▽対話通じて関与
 開発中の薬を患者に使ってもらい、効果などを確かめる臨床試験(治験)をはじめ、医学研究には患者の協力が不可欠だ。だがPPIは、研究対象になることとは区別される。医療研究の支援や予算配分を担う日本医療研究開発機構(AMED)が2019年に発行した「PPIガイドブック」によると、例えば研究内容を決める段階で意見を述べるなど、研究者との対話を通じて研究に関わることを意味する。
 同書はPPIの意義を「研究者が新たな視点や価値を得ることができ、研究に対する患者の不安や疑問も解消できる」などと解説。AMEDはほかにリーフレットや動画も作成し、PPIの啓発に力を入れている。
 ▽イコールでない
 「発表ありがとうございました。私たち患者会もできることで積極的に連携していきたい」
 今年6月、厚生労働省の研究班が東京都内で開いた会議で、全国脊柱靱帯(じんたい)骨化症患者家族連絡協議会の増田靖子会長はこう述べた。医師や研究者に交じって患者ら約10人が熱心に発表を聞いた。
 この病気は脊髄を保護する靱帯が骨のように硬くなって脊髄を圧迫するため、手足のしびれやまひが生じる。一部は国の難病に指定されている。
 患者会と研究班は、病気の原因解明や治療薬開発のため連携を深めてきた。年2回の班会議に患者会メンバーが参加するのはPPIを進める取り組みの一つだ。
 患者会の声を受けて、新たに加わった研究テーマもある。脊髄の圧迫を取り除く手術後に残る痛みの実態や対処法を調べる研究で、19年に診療の指針を改定する際に患者会が要望した。痛みは生活の質に大きく影響するが、従来は治療効果を評価する際にそれほど重視されなかった。
 
 

 

 研究班員の吉井俊貴東京医科歯科大准教授(整形外科)は「医者が考える治療成績と患者にとっての成績は必ずしもイコールでない。痛みにも注目すべきだと改めて認識した」と言う。
 患者会は、病気の発症に関わる遺伝子を探る研究についても、意義の啓発に積極的に協力している。増田さんは「研究班の先生たちと顔の見える関係があることが大事。患者の声があって研究も進む」と話している。
 ▽負担重いとの声
 東京大医科学研究所の渡部沙織特任研究員が18年に実施した調査によると、回答した患者会(93団体)の80%が研究への協力や参画の経験があるとした。一方で、参画に伴う負担としては「人的リソースの不足」「研究に関する情報を集める労力」「経費など財政的負担」が上位を占めた(複数回答)。
 多くの患者会は専任スタッフがいないボランティアによる運営で、年間予算も少ない。自ら実態調査をしたり、海外の組織と国際的に連携したりするのが難しい。
 米国では、多額の寄付により大規模な予算を持ち、患者の症状や遺伝情報などのデータを広く集めている患者会もある。欧州には、患者が医薬品開発の仕組みを学べるプログラムがある。
 渡部さんは「患者の参画は重要になっているが、日本では患者会への支援が海外に比べて弱い。研究者や行政がPPIの重要性を理解し、学ぶ機会の提供も含めて支援することが望まれる」と指摘する。(共同=岩村賢人)

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