オンライン賭博に懸念 コロナで目立つ依存症 治療に新たな課題も

2022年09月20日
共同通信共同通信

 パチンコ、パチスロ、競馬―。賭け事がやめられなくなる「ギャンブル依存症」は、借金が重なって家庭を壊すこともある。新型コロナウイルス感染症の流行後は、オンラインの公営ギャンブルにはまる人も目立つようになった。国立病院機構久里浜医療センターの松下幸生院長は「自宅や職場でいつでも賭けることができ、お金を使っている実感が乏しいのが特徴だ」と指摘。「ギャンブル依存症は適切な治療で回復が期待できる病気。社会全体の意識啓発も必要だ」と話す。

ギャンブル依存症について話す、国立病院機構久里浜医療センターの松下幸生院長
ギャンブル依存症について話す、国立病院機構久里浜医療センターの松下幸生院長

 

 ▽距離感
 松下さんらが2020年に実施した国の調査では、18~74歳の2・2%にギャンブル依存症の疑いがあった。単純比較はできないが、1%に満たないドイツやデンマーク、オランダなどに比べると目立って高い。人口に当てはめると100万人を超える依存症疑いの人がいることになる。
 「あまり意識しないが繁華街にパチンコ店が立ち並ぶ日本はギャンブルとの距離感が非常に近い」と松下さん。「これが海外との違いに関係するのかもしれない」
 17年に調査員が対面で実施した国の調査では依存症疑いは0・8%だった。コロナの影響で質問票を郵送し、ネットも活用して答えてもらった今回の調査では、むしろ正直な回答が得られて実態を反映している可能性がある。
 ▽認知のゆがみ
 20年の調査では7人に1人が「家族や大切な人にギャンブルの問題がある(あった)」と答えた。借金の肩代わりを求められたり、家庭不和や別居につながったりすることもある。決して人ごとではない。
 松下さんは21年以降、国内のギャンブル依存症外来を訪れた約180人の経過を追跡している。7割が20~30代で低年齢化の傾向がみられる。対象はパチンコやパチスロが多いが、主にオンラインで公営ギャンブルなどをやっている人も3分の1を占めていた。

 
 

 

 調べると、のめり込みが強い重症の人ほど「これだけ負けたんだから次は勝てるはずだ」といったギャンブラー特有の〝認知のゆがみ〟に陥っていた。こうした人は治療が難しくなりがち。アルコール依存と異なり、抑うつ症状が長く続く傾向もみられた。
 ▽短期間で
 ある勤め人の30代男性は、コロナ流行後にオンラインの公営競馬にはまった。「もともとパチンコは好きで小遣いの範囲で楽しんでいたらしい」と松下さん。ところがコロナの緊急事態宣言でパチンコ店が休業し、それがきっかけでオンライン競馬に手を出した。
 会員登録すれば中央競馬だけでなく地方競馬にも賭けることができる。レースが開催される朝から夜まで熱中し、みるみるうちに借金がかさんだ。とうとう家族に知られて外来を訪れることになった。「短い期間で症状が悪化するのがオンライン賭博の依存症の特徴かもしれない」と語る。
 ギャンブル依存症の治療には薬物でなく心理療法の「認知行動療法」を用いる。自分の心が抱える問題を見つめて整理し、それを回避するための対処方法を身につける。決められたプログラムを半年かけて主に通院しながら実施する。
 松下さんは「現金を持ち歩かない、ギャンブル以外の趣味を持つなど、まずは行動を変えることで認知の正常化につなげることが多い」と説明する。
 ただスマートフォンによるオンライン賭博なら現金を持ち歩く必要はない。松下さんは「新たなギャンブルの形態に合わせ、従来の治療アプローチを手直しする必要があるかもしれない」と話す。(共同=吉村敬介)