産む、産まない自分で選ぶ 核心評論「女性の自己決定権」

2022年09月06日
共同通信共同通信

 米連邦最高裁が人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた半世紀前の判決を覆して約1カ月。中絶の是非を決める権限を委ねられた各州では法廷闘争に持ち込まれたり、中絶が合法の州へ女性が殺到したりするなど、大きな混乱が続いている。

 日本も対岸の火事ではない。明治時代からの刑法の堕胎罪が存続し、中絶は一定の条件下で認められているに過ぎない。「性と生殖に関する自己決定権」は女性の人権の基本だ。世界に後れを取る経口中絶薬や緊急避妊薬の導入などを推進し、産む、産まないの女性の権利を保障する政策を早急に実現するべきだ。

 世界80カ国以上で普及している経口中絶薬は日本でまだ承認されていない。女性に肉体的・精神的負担を与える「搔爬(そうは)法」の外科手術がいまだに行われ、しかも費用が高額だ。世界保健機関(WHO)は搔爬法が「時代遅れの手術で、合併症の観点から行うべきでない」と日本に勧告している。

 さらに問題なのは母体保護法の規定で、中絶に配偶者同意が義務付けられていること。国連の女性差別撤廃委員会は日本に同意要件削除を求めているが、厚生労働省は現在承認手続き中の経口中絶薬についても原則、配偶者同意が必要との見解だ。研究者らは6月、女性の自己決定権を奪っているとして、同意撤廃を求める約8万人の署名を同省に提出した。

 世界経済フォーラムによる2022年版「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」で、日本は146カ国中116位。日本より下位にあるトルコ、サウジアラビア、クウェート、モロッコなどと日本の共通項は、中絶に配偶者同意が必要とされる点だ。世界で10余りの国・地域に過ぎない。

 格差報告は政治や経済などで総合評価するランキングだが、女性の自己決定権を尊重しない国々が格差の大きい国々であるのは偶然ではない。

 望まない妊娠を防ぐ緊急避妊薬も、世界約90カ国で薬局で安価に購入できるが、日本では処方箋が必要で価格も高い。迅速な対応が必要な女性にとって、ハードルはあまりにも高い。ちなみに、フランスでは約20年前に薬局で処方箋なしに入手できるようになった。

 参院選応援演説で、自民党の桜田義孝元五輪相は少子化を巡り、無理をして結婚しなくてもいいと考える女性が増えているとして、「女性も男の人に寛大になってほしい」と発言。ネット上はハッシュタグ(検索目印)「#私たちは寛大すぎる」を付けた、抗議の発信があふれた。

 真のジェンダー平等実現には、女性が自身の体を自分で管理する権利を得ることが欠かせない。避妊や中絶を他者に「寛大に」委ねることなく、あらゆる選択肢を手にできるようにするべきだ。

 中絶規制を容認した米国の判決の影響で、日本の性と生殖を巡る政策論議がさらに後ろ向きになってはならない。

2022年8月3日配信