政治家は関係を明らかに   30年ノーマーク、深く浸透  視標「安倍氏暗殺事件と旧統一教会」

2022年08月17日
共同通信共同通信

 安倍晋三元首相暗殺事件は、国内外に激しい衝撃を与えている。1936年の二・二六事件以来の首相経験者暗殺は日本史の長いスパンはもちろん、当面する政治の行方にも深い影響を与えるだろう。「(旧)統一教会とは何か」「政治と統一教会」を核心におびただしい報道が続くが、物理学者、武谷三男氏の「三段階論」にならえば、そろそろ「現象論」から「実体論」「本質論」に進まなければならない。

 私には鮮明な記憶がある。まず95年秋。オウム真理教事件で松本智津夫元死刑囚(教祖名麻原彰晃)たちが逮捕され、焦点が裁判に移っていったときだ。警察庁幹部と警視庁幹部に統一教会についてレクチャーを求められ、了承すると条件があるという。「誰が集まっているか聞かないでほしい」。狭い部屋にぎっしりと眼(め)の鋭い男性たちがいた。1時間ほど教団の歴史や霊感商法などについて説明した。

 その後、幹部は私に言った。「オウムの次に統一教会を摘発の対象にしている」と。有力な情報源もできており、経済問題から捜査に入りたいと具体的だった。

 それから10年たった2005年。私は警視庁幹部と久しぶりに会った。「いまだから言えることを教えてください」。そう伝えると、統一教会を摘発できなかった理由について一言だけ口にした。「政治の力だよ」

 それでも、09年には警視庁公安部が印鑑販売会社の社長ら信者7人を逮捕、統一教会渋谷教会を捜索した。教団の本部に捜査が進むかと注目されたが、それはなかった。

 歴史的には、1992年に行われた統一教会による合同結婚式報道をピークに、教団に対してノーマークの状態が続く。「空白の30年」である。そして元首相暗殺事件が、統一教会の存在と問題を一挙に時代の先端へ押し上げてしまった。

 いくつもの論点がある。政治との関わりでいえば、信者が霊感商法を行ってきた統一教会は文鮮明教祖の指示で、悪評が付いた名称を「世界平和統一家庭連合」へ変更しようと試みる。97年に文化庁へ申し入れるが、教義などが変わるわけではないので断られる。それが認められたのが、安倍政権時の2015年で、下村博文文部科学相のときであった。

 名称変更は形式的には文化部長(当時)の最終決裁だが、そのレベルで決められるものではない。どんな力が働いたのだろうか。下村氏は、文化庁に問い合わせたところ「大臣に伺いを立てることはしていない」と回答があったと、暗殺事件後にコメントした。

 だが、私の事務所は15年9月30日、文化庁に名称変更について聞き、文化庁は「本件については事前に大臣に説明いたしました」と答えている。教団の過去や現状も「周辺情報」として「大臣にお話はしました」とも認めている。下村氏が「事前に」何らかの発言をした可能性は高い。

 名称を変更した教団は信者が引き続き霊感商法を行い、会員に多額の献金を求めてきた。「空白の30年」の間には、フロント組織を利用して国会議員や地方議員に深く浸透していた。それらの問題が噴出している。

 茂木敏充自民党幹事長は「社会的に問題が指摘される団体との関係は、厳正かつ慎重であるべきだと注意を促したい」と7月26日の会見で語った。暗殺事件の背景に浮上した旧統一教会との関係について、自民党を中心とした政治家には、自己切開が求められている。

 (新聞用に2022年7月29日配信)