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【編集後記】Vol.404=「モンスター」

2022.7.22 16:01 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
東京・アミノバイタルフィールドから見える夕焼け
東京・アミノバイタルフィールドから見える夕焼け

 

 監督どころかコーチの経験もない素人に、時々相談しに来る現役のコーチがいる。今のやり方で果たしていいのか。そんな迷いがあるようだ。

 

 「選手の話を真摯に聞く。意見や見解がぶつかることを恐れず、分かりやすく方針を示す。八方美人にならない」

 できるアドバイスはいつもありきたりなことだけれど、それを聞いて安心したという顔を見ると、少しは役に立ったのかなと思う。

 

 「うちの子どもはなぜ試合に出られないのか?」「特定の選手を優遇していないか?」

 思い込みで自己中心的な要求を繰り返す、いわゆる「モンスターペアレント」は今の時代珍しくない。

 我が子を思う気持ちは理解できるが監督、コーチの判断を一方的に間違っているとする主張はチームの和を乱し、成熟した組織づくりの妨げになる。

 

 京大を6度の大学日本一に導いた元監督の水野彌一さんは学生に「誰のためでもない、自分のためにフットボールをしなさい」と言っていたそうだ。

 気が遠くなるような長時間の反復練習を選手に課す。それは権力や威力を伴わない「強制」であり「強要」ではない。選手が安全にプレーするために必要で大切なプロセスだからだ。

 硬質な師弟関係は、柔軟な発想と相互理解を生む。そこでは「勝利」という目標を達成するために不要なものを排除する共通認識が醸成され、雑念や雑音が入り込む余地がなくなる。

 

 アメリカンフットボールで、守備陣の真ん中でまさに「守護神」のようにどっしりと構え、相手の攻撃を封じる役割を担うポジションを「モンスター」と呼ぶ。

 こういう頼りになるモンスターなら、チームとしては大歓迎だろう。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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