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アメリカンフットボールに人材を 他競技出身者を対象に計測会実施

2022.7.22 15:24 生沢 浩 いけざわ・ひろし
世界陸上の男子110メートル障害に出場したデボン・アレン(AP=共同)
世界陸上の男子110メートル障害に出場したデボン・アレン(AP=共同)

 

 米オレゴン州ユージーンで開催されている陸上競技の世界選手権(世界陸上)で、NFLイーグルスのWRデボン・アレンが男子110メートル障害の予選で、世界記録まで0秒04に迫る好記録を出したことが話題になった。

 アレンはメダル候補として期待されたが、残念ながら決勝でフライングを犯して失格になった。

 

 27歳のアレンは2016年まで3年間オレゴン大学のWRとしてプレーしていた。しかし、彼のこれまでの「主戦場」は陸上競技だ。

 オリンピックには2016年のリオデジャネイロ大会と昨年の東京大会に出場している。その意味ではNFLに主眼を置きながらトラック競技に挑戦したシーホークスのWR、DKメトカーフとは少し異なる。

 このオフに、イーグルスがアレンのスピード(非公式ながら40ヤード4秒35)を生かすために契約をした。今後はイーグルスでのポジション獲得に挑戦する。

 

 アメリカではスポーツを志す高校生や大学生が、複数のスポーツを経験するのが一般的だ。

 QBトム・ブレイディ(バッカニアーズ)やQBラッセル・ウィルソン(ブロンコス)が野球のメジャーリーグからもドラフト指名されたのは有名な話だし、現役選手ではないがDEジュリアス・ペッパーズやTEトニー・ゴンザレスは、バスケットボールでも名選手だった。

 

 NFLドラフトで指名される選手の8割以上が高校時代に複数のスポーツを行っているというデータもある。

 複数のスポーツを経験することで運動能力が向上し、筋肉もバランスがとれた形で発達するとされており、トップレベルで活躍するアスリートが誕生しやすいのだろう。

 

 親しんだスポーツの数は2競技が最も多く次いで3競技、アメリカンフットボールに専念、4競技という順になるそうだ。

 かつては野球との「兼任」が多かったが、最近では陸上競技やバスケットボールが多い。アメリカンフットボールと開催時期が重なるサッカーやアイスホッケーは少数派だ。

 

 日本では依然として一つのスポーツを長期間にわたって行うのが主流だ。年少のころから始めて10代後半から20代にかけて「極めていく」という構図だ。

 マルチスポーツ体験がアスリート養成に効果的だとは分かっているが、なかなか環境が整わないというのが実情だ。

 

 そんな中、日本アメリカンフットボール協会(国吉誠会長)がユニークな企画を用意した。

 「クロスオーバーアスリート」プログラムと呼ばれるもので、他競技(主に野球)をプレーしている高校生を対象に計測会を行い、優秀な人材をアメリカンフットボールに誘導しようというものだ。

 

 7月31日の東海地区(愛知学院大学日進キャンパス)を皮切りに関東、関西、九州、中四国、北陸での開催が予定されている。

 測定種目は40ヤード走や20ヤードシャトル、垂直跳びなどNFLドラフトコンバインでも採用されているものが多い。

 

 日本で競技人口の多いサッカーや野球は子どもの頃から始めた方が有利なスポーツだ。それに比べてアメリカンフットボールは日本では主に大学から始める選手が多い。

 そこでJリーグやプロ野球、高校野球の甲子園大会やオリンピックなどを目指しながらも夢破れた高校生に、新たな挑戦の場を提供しようというのが「クロスオーバーアスリート」プログラムの大きな目的の一つだ。

 

 冒頭で紹介したアレンがNFLに挑戦するように、他競技のアスリートがアメリカンフットボールに挑戦するというシステムが確立されれば、そのメリットは大きい。

 アメリカンフットボールの競技人口増や人気拡大が期待されるだけではなく、年々進む若年層のスポーツ離れの流れに一石を投じることができるかもしれない。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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