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真夏のビーチで鍛える 選手と根気よく付き合い上達導く

2022.7.21 14:49 中村 多聞 なかむら・たもん
友人の結婚披露宴に出席した中村多聞さん(中央)=中村多聞さん提供
友人の結婚披露宴に出席した中村多聞さん(中央)=中村多聞さん提供

 

 以前はしょっちゅうあった結婚式にずいぶん行っていなかったのですが、先日素敵なカップルの素敵な結婚披露宴に招待されました。

 服装はスーツじゃなくても構わないということだったので、お腹を空かせて乗り込んで楽しませてもらいました。

 モモコちゃんにタイ君、結婚おめでとう。末長くお幸せに。時間間違えて遅刻してゴメンなさい。

 

 さて僕がコーチをしている電通キャタピラーズの練習は基本的に日曜日だけです。週に1度全員が集合して練習をしています。

 週1回練習にするメリットは多々あります。練習のない日が週に6日あり、フットボールをしている大学卒の多くの人は週2日の休みが会社から与えられていますので、完全にフリーな日が一日あります。

 

 完全休養でもよし、仕事をするもよしプライベートを充実させるもよし。選択肢が広がります。グラウンドでの練習以外のトレーニング系の時間もしっかり確保できます。

 

 良くない点は週2回練習しているチームとの差が「倍ある」ということです。効率よく凝縮した内容でしっかり練習しないと、他のチームに差をつけられてしまいます。のんびりとりあえず週2回練習しているよりも緊張感があって非常に良い感じです。

 伸びしろのある選手にとって練習量が多いことはいいことです。過去に育んだ技術や経験を手放さないように調整するベテランであれば、練習量は少ない方が疲れなくて良いかもしれません。まあ一長一短です。

 

 僕自身、週一度の練習だったのは、中学時代に経験した河川敷で練習していたプライベートチームだけです。

 うまくなったと感じたのは、防具の付け外しだけだったような記憶がある程度です。フットボールのこともいろいろと習いましたが、試合の時にしか人が集まらないチームでしたし全く上達しなかった記憶があります。

 

 そこで週1度では心許ないという志の高い選手たちが、チームとは別枠で「タモンコーチどうか鍛えてくれ」と依頼してくるようになってきました。

 年老いた父が暮らす老人ホームの近くに引っ越した僕の家は、潮騒が聞こえてくるほど砂浜から近いので、若者を鍛えまくるにはちょうどいい場所なのです。

 

 無料で使える天然芝の広場もあり、申請すれば借りることのできるグラウンドも数カ所あります。そしてどなたもご存知の全長65キロに及ぶ日本最大級の砂浜があります。

 「日本の渚100選」にも選定されている長く広い砂浜で(実際には50メートルも使いませんが)走ったり飛んだり跳ねたりして頑張っている選手をしごいています。

 

 暑くほてった体を冷やすために、トレーニング終盤にはみんなでサーフィンをして「ああ楽しかった」という最新の記憶が強烈に残ってしまい、また次回もトレーニングに来てしまうという好循環ですね。全員、見事に騙されています。

 

 ついでに僕もサーフィンに挑戦しています。興味を持ち、ちょいちょいたしなみ始めたのが中学2年の頃です。

 当時の体重は65キロ程度。運動神経も平均以上は持っていました。足代わりにスケートボードも使う少年でしたので、サーフィンもそれほど難しくなく遊び程度にやっていました。でも電車であの大きく長いボードを運ぶのはとても大変で、すぐにやらなくなりました。

 

 そして、フットボールを引退してしばらく経った今から約8年前の40代前半のに、突然気が向いてサーフィンを再開。体重は120キロまで増量していましたが、まだ何とか板の上に立ちそれなりに楽しむことはできました。

 しかしその後にフットボールコーチをし始めてからは、現役時代に手術した膝の調子が年々悪くなり、立っているだけのコーチ業なのに練習後は腫れあがりすごい痛みもある平均的なジジイの体になっていきました。古傷が痛むってやつですね。

 

 通常でも地面に座っている状態から立ち上がるのが困難な筋力と身体能力になってしまい、波で揺れ動くボードの上でバランスを保ちながら120キロの体を立ち上げることが非常に難しくなっています。

 昔もそれほど上手だったわけでもなく、初心者同然なのですが、これはあまりにもひどい。自由に体を操作できないという悲しい現実を思い知らされています。

 

 しかし、僕はそのまま負けたままでは気が済まない性格です。初心者向けのサーフィン上達法などを指導、解説している動画が世にあふれていますから、仕事の合間にそれらを見て徹底的に勉強し「やらなければならないこと」「やってはならないこと」を整理し、いくつかのテーマを持ってビーチで挑戦しています。

 

砂浜で多聞コーチの指導を受ける電通の選手たち=中村多聞さん提供
砂浜で多聞コーチの指導を受ける電通の選手たち=中村多聞さん提供

 

 でも、一つを守ればもう一つがおろそかになる。その一つを守ればまた別のことを忘れるの繰り返しです。

 一生懸命取り組んで「上達したい」の一心で臨んでいるのに叶わない。「あれ、これどこかで聞いた事あるフレーズやな?」とふと考えると、フットボールを指導している時に選手たちが陥っているいつものアレやんかと気付きました。

 

 「なぜ注意したこと、指導したことをすぐ次のプレーで実践しないのか?」と、ここ数年何百回と叫んで嘆いて考えていたことです。

 サーフィンをやることで、僕が指導したことをすぐにできない選手の気持ちが分かりました。できないんです。難しいんです。最初は特にできない。

 

 プレーの直前まで思い返して反芻しても、始まればスッカリ忘れて自己流の慣れたやり方でクセのあるままやっちゃって、新しく習った指導内容を守れない。でもそれが初心者なのですね。

 

 一度言えばすぐに実践して結果を出せた選手も多く存在しますので、カリキュラムやメソッドが悪いのではなく、あくまでも個人差です。

 うまくなるために必要な時間が人それぞれである。決してコーチをおちょくっているわけではない、を学びました。

 

 競技スポーツ以外を体験したことがない偏った脳みそを持つ僕は、レジャーで楽しむスポーツの価値や輝きを理解していかねばなりませんね。

 センスのないヘタクソ、いわゆる下手の横好きが上達したり上級者になるには、お互いの根気と時間をたっぷり使うことで解消するかもしれない。そう悟った53歳の僕でした。

中村 多聞 なかむら・たもん

名前 :中村 多聞 なかむら・たもん

プロフィール:1969年生まれ。幼少期からNFLプレーヤーになることを夢見てアメリカンフットボールを始め、NFLヨーロッパに参戦しワールドボウル優勝を経験。日本ではパワフルな走りを生かして、アサヒ飲料チャレンジャーズの社会人2連覇の原動力となる。2000年シーズンの日本選手権(ライスボウル)では最優秀 選手賞を獲得した。河川敷、大学3部リーグからNFLまで、全てのレベルでプレーした日本でただ一人の選手。現在は東京・西麻布にあるハンバーガーショップ「ゴリゴリバーガー」の代表者。

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