QBメイフィールドはパンサーズへ 迷えるブラウンズ、訴訟抱えるワトソンは出場停止処分か

2018年のNFLドラフトで1巡全体1位指名を受けたQBベイカー・メイフィールドがついにブラウンズからトレードで放出され、パンサーズに移籍することになった。
QBデショーン・ワトソンのテキサンズからブラウンズへの電撃移籍に端を発したメイフィールドの去就問題はこれでひとまず決着したことになるが、一方でいろんな疑問を残す結果となった。
ワトソンのトレード移籍が決まったのは今年3月。昨年まで先発QBを務めてきたメイフィールドはこれに不快感を示し、トレードによる放出を志願してきた。
しかし、2020年シーズンにブラウンズがプレーオフに出場した際の立役者の一人であるメイフィールドへの評価は意外と低く、高額の年俸もネガティブ要因となって交渉はなかなか進まなかったと伝えられている。
キャンプインまで数週間となった現在、ようやくパンサーズとの間でトレードが成立した形だ。交換条件は2024年のドラフト5巡指名権だが、今年のメイフィールドの出来次第では4巡指名権に変わる可能性もある。
かつてキャム・ニュートンがエースQBとして活躍したパンサーズは昨年、ジェッツからトレードで獲得したサム・ダーノルドを先発起用した。
メイフィールドと同じく2018年にドラフト1巡3番目でNFL入りしたダーノルドは先発した試合で4勝8敗と振るわず、それがメイフィールド獲得の理由となった。

メイフィールドとダーノルドは開幕までにスターター争いを演じることになるのだが、二人とも今年がルーキー契約の最終年にあたり、パンサーズはすぐに契約延長の手続きをする必要に迫られる。
先発争いに勝った選手だけを残して契約延長するのならば経費は抑えられるが、控えQBに経験不足の不安が残る。二人とも慰留するのであれば莫大な契約金が必要だ。
何よりも、この二人がパンサーズを背負って立つQBとなるかどうかはふたを開けてみなければ分からない。パンサーズにとってメイフィールド獲得は手放しで喜べるディール(取り引き)ではない。
ブラウンズも深刻な問題に直面している。せっかく獲得したワトソンが、今季は試合に出場できない可能性があるからだ。
ワトソンは複数の女性からハラスメント訴訟を起こされた。それが昨年1年間の出場を見送った大きな理由だ。現在までにそのほとんどの訴えが却下されるなど「解決済み」だが、依然として四つの訴訟が継続中だ。
この事態を受けて、NFLはワトソンがリーグの定める行動規範に反する行為をしたと主張し、出場停止処分を科す方向で準備を進めている。すでに本人や関係者の事情聴取を終えて、審議に入っている模様だ。
複数の情報によればNFLは「無期限出場停止」を念頭においているようで、少なくとも今季いっぱいは出場を認めない方針だ。
これに対し、選手を支援する立場のNFL選手会は停止処分の軽減もしくは撤回を求めている。
出場停止期間が短縮されたとしても、6試合前後の欠場は余儀なくされるだろう。
メイフィールドが退団した今、残されたQBはコルツで先発経験のあるジャコビー・ブリセットとスティーラーズで控えだった先発経験のないジョシュア・ドブスだけだ。
ブラウンズはQBに大きな不安を抱えたままシーズンのかなり長い期間を戦わなければならないのだ。
元ドラフト全体1位指名のトレードは大きなニュースだが、残念ながらこの移籍によって利益を得られるのはブラウンズとパンサーズの当事者ではなく、対戦する相手チームなのかもしれない。