女性差別の正当化やめよ 日本の組織に問題  視標「順大医学部不正入試」

2022年06月13日
共同通信共同通信

 東京地裁は5月19日、順天堂大医学部の入試で女性が性別を理由に差別されたとして、同大に賠償を命じた。同大は、学内の第三者委員会の報告で、合格基準を男女で変え、同じ得点であっても、男性は合格、女性は不合格にするという女性差別を行っていたことが判明している。

 原告が勝訴したのは当然だが、慰謝料は桁違いの少なさであり、性別を理由に差別を受けた原告の精神的苦痛に全く対応していない。また、この間に判明した順天堂大の弁明に看過できない日本の組織の問題が表れた。

 裁判前に、順天堂大は女子は男子より「コミュニケーション能力が高いが、その分男性は将来の伸びしろが高い」から男子に加点したとの議論を行っていた。この理由は日本企業の多くが「男性は将来辞める可能性が低いから」採用を優先するという理由に似ている。この種の議論は医師に対しても主張された。

 事実は一般正社員の場合、育児期の離職率には大きな男女差があるが、医師の場合は男女の離職率の差は小さく、有資格者の平均就業率は男性が91%、女性が84%で7ポイントの差しかない。

 一般の場合でも男女の育児期における離職率の違いは、「家事育児は主として妻の責任」という不平等な家庭内分業が背後にある。さらに女性の育児期の離職は、「いずれ辞めるから」という理由で男性と同等の機会を与えられなかった女性が職場に失望し、育児をきっかけに辞めるという予言の自己成就の側面が強い。

 家庭や職場で女性が不利な状況にある日本社会で、男性に比べ就業時間が短い、就業継続率が低い、などの理由により女性の差別待遇を正当化する、という理不尽がいまだ根強く存在している。その結果の一つとして、医師を含め多くの高所得の専門職での女性割合は日本が経済協力開発機構(OECD)諸国で最低という現状があり、経済活動での大きなジェンダーギャップを生む一因となっている。

 裁判ではさらに、女性に対する今までの不利な扱いを前提とした別の議論が展開された。女性合格者を制限したのは女子寮収容能力がなかったからという理由である。寮がなくても通学可能であり、憲法14条1項および教育基本法4条でうたわれる、性別による差別の禁止や教育機会の男女平等の原則を犯す理由としてはあまりにも矮小だ。

 実は、同様の理由は都立高校の男女の不平等な定員の存続に関し存在した。1969年に戦前の旧制中学・女学校の伝統を半ば引き継いだ男女別に大きく異なる定員制をやめ、男女同数の定員にする努力義務が課せられた。ところが男子の多い都立高校の多くはそれを達成せず、理由の一つに女子用の設備が整っていないことが挙げられた。

 その結果存続した男女別定員制は、入試の合格点の平均で女子が男子を上回り、逆に合格者数は男子が女子を上回るという不平等を長年にわたり生み出してきた。

 女性差別が明るみに出るたびに、憲法の精神とはかけ離れた、既存の男女不平等の結果を前提にして女性差別を正当化する、さまざまな弁明がされてきた。だが、そこにはあるべき望ましい社会のビジョンも、公正さも、合理性もない。今回の裁判結果が、そのような詭弁のまかり通る社会の終焉のきっかけとなることを強く願う。

 (新聞用に2022年5月21日配信)