×
メニュー 閉じる メニュー

糖尿病食事指導は個別化へ 質問票の有効性を実証 目標を具体的に、東大など

2022.5.31 0:00
 生活習慣が治療に直結する2型糖尿病の療養生活では、何よりも運動と食事という患者本人の取り組みが大切だ。東京大と東京慈恵医大の研究グループは、独自に開発した質問票を用いて患者本人の食事の傾向や特徴を明らかにし、具体的な改善策を提案する方法で血糖値を下げる効果を実証した。指導の個別化に向けた大きな手掛かりであり、同様に食生活の改善が必要な他の生活習慣病の療養指導にも活用が期待される成果だ。
 ▽1カ月間の記憶
 佐々木敏東京大教授(社会予防疫学)らは1990年代から、日本人の食生活をどうしたら正確に把握できるかの研究を開始。質問票を試作して実際の食事との照合を繰り返すことで、回答結果から食習慣が導き出せるよう精度を高めていった。
 完成した「簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ)」は、過去1カ月間の食事を思い出しながら記入すれば、60種類の食品と約100の栄養素について1日の平均摂取量が分かる仕組みだ。
 1カ月前のことなど忘れていそうだが、個々の食事ではなく、どのぐらいの頻度で食べていたかを尋ねるのがミソだ。これが「実際の食習慣を意外とよく反映する」と佐々木さんは言う。
 
 

 

 肉料理、魚料理、煮物・汁物、酒類、お茶などと大別した項目に加え「イカ・タコ・エビ・貝」「ニンジン・カボチャ」「キノコ」「海藻」など特定の食材の質問に「毎日2回以上」「週に1~2回」「3~4回」「食べなかった」などの選択肢で回答。食べる速さや、外食の定食1人前と自宅の食事のご飯やおかずの量の比較など合わせて約80の設問があるが、約15分で回答が可能だ。
 ▽安心材料も提示
 従来型の糖尿病食事指導では1日の目標カロリーを設定し、食品交換表を用いてバランスよく食べるよう指導する。「ご飯は控える」「野菜を取る」「バランスよく食べる」といった指導がほぼ患者全員に伝えられる。
 一方、個別化した指導では、質問票で得られた結果に基づき、個別の食品群や栄養素の過不足に応じた「何をどう食べるか」の目標を具体的に設定する。数字を示し、例えば「肉は半分ぐらい」「野菜を3割増し」など極めて具体的に、優先度をつけた指導ができる。
 摂取量に問題ない食習慣が分かるのも利点で「ご飯はちょうどいい」「菓子類も今ぐらいで大丈夫」など、患者に安心材料を示せるのも取り組みへの励みになるという。
食習慣を調べる質問票を開発した佐々木敏東京大教授(右)と、糖尿病の食事指導に利用する有効性を実証した大村有加東京慈恵医大助教=東京都内
食習慣を調べる質問票を開発した佐々木敏東京大教授(右)と、糖尿病の食事指導に利用する有効性を実証した大村有加東京慈恵医大助教=東京都内

 


 研究グループの一人で、元東大客員研究員の大村有加東京慈恵医大助教(糖尿病内科)は、糖尿病患者136人で従来型の食事指導をするグループと、個別化した指導をするグループとに分けて血液データや食習慣の変化を比べた。
 その結果、従来型よりも個別化指導したグループの方が血糖値の数値がより改善した。体重、中性脂肪、コレステロールなどの数値も改善傾向が見られ、個別化の効果が確かめられたという。
 ▽未来を変える
 BDHQは脂質異常症への職場での栄養指導や、地域での減塩指導などで実績があり、世代別の質問票もできつつある。
 佐々木さんは「今後は2型糖尿病だけでなく、さまざまな食事指導に活用するとともに、日本人の食習慣の基礎資料としてビッグデータを集約したい。食事指導の未来を根本的に変えられる可能性がある」と話す。
 ただし、質問票を使いこなすにはそれなりの技術が必要で、人材育成が鍵になる。佐々木さんは質問票を活用する管理栄養士の養成を進めており、多くの参加を呼びかけている。(共同=由藤庸二郎)

最新記事

関連記事 一覧へ