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転移先だけに見つかる? まれでない原発不明がん 新たな薬で治療に期待

2022.5.17 0:00
「原発不明がん」という、聞き慣れない病気がある。最初にできたがんの「原発巣」が見つからず、転移した病巣だけが見つかるがんのことだ。がん全体の1~5%を占め、日本では推定で年7千~8千人と、決してまれではない。標準治療が確立しておらず、治療成績もかんばしくないものの、中には原発巣がある程度推定されるケースがある。その見極めが重要だ。新しい薬が承認され今後の治療、研究の進歩も期待される。診断や治療の進め方について専門家に聞いた。
 ▽消えた可能性
 原発巣が見つからないとはどういうことなのか。
 国立がん研究センター中央病院の米盛勧・腫瘍内科科長は「がんは一般的に原発巣から進行して転移していくと理解されているが、このがんは、転移先のがんが見つかってもその原発巣が見つからない」と説明する。
 がんは発生後に小さくなったり、なくなったりする場合があるため、原発巣のがんが消え、転移先だけで増殖すると原発不明がんという状況が生じる。実際にこのがんで亡くなった人を調べても20~50%は原発巣が見つからず、消えた可能性があるという。
 
 

 

 がんは通常、発生部位の臓器や組織によって症状や検査結果に特徴があり、治療もそれに沿って進められる。しかし原発不明がんではそうはならない。米盛さんによると、原発巣探しに時間がかかり、専門病院への紹介が数カ月遅れになることもあるという。
 ▽詳細検査で確定
 診断の手順と定義は定まっている。
 日本臨床腫瘍学会がまとめた最新の「原発不明がん診療ガイドライン」によると、通常のがんの検査で原発巣が見つからない場合、原発不明がんの疑いありとして詳しい検査が進められる。
 詳細検査の項目は患者によって異なるが、一般的に身体所見、血液や尿などの検体検査、エックス線やCTなどの画像検査、がんの一部を採取して調べる組織学的検査などだ。
 詳細検査で原発巣が見つけられたり、がんでない良性腫瘍などだと分かったりした場合を除き、原発不明がんと確定する。既に「進行・転移がん」であることから、生存期間は中央値で6~9カ月と厳しいデータがある。
 ▽治療有効群
 ただ、中には腫瘍の広がりや組織の特徴から消えた原発巣が推定できるものがある。乳がんや卵巣がん、前立腺がん、神経内分泌腫瘍などだ。これらが疑われれば、個別のがんの腫瘍マーカーも検査する。
 同ガイドラインによると、原発不明がんのうちこうした「原発巣が推定できる原発不明がん」は15~20%。ほかの原発不明がんに比べ、特定の有効な治療法が確立しており、治療成績も比較的良いという。
 では、その他の原発不明がんの治療はどうか。
 同ガイドラインでは、日常生活への支障や、検査数値などを調べた上で詳細検査から1カ月程度で治療を始めるよう推奨する。治療ではシスプラチン、カルボプラチンなどプラチナ製剤と呼ばれる抗がん剤により化学療法が施される場合が多い。ただ、これらの化学療法が有効だというはっきりしたデータはなく、標準治療はまだ確立していない。
 こうした中、新たな薬剤として免疫チェックポイント阻害薬「ニボルマブ(商品名オプジーボ)」の効果が医師主導治験で確かめられ、昨年末、原発不明がんの薬として適用を拡大することが承認された。有効性が確かめられた初の薬物療法として今後の臨床応用とその使い方についての研究の推進が期待される。(共同=由藤庸二郎)

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