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子ども守るワクチン期待 新手法で開発進む RSウイルス感染症

2022.5.14 0:00
 誰もが子どものうちにかかる風邪の一種が「RSウイルス感染症」だ。乳幼児や高齢者では肺炎を起こして重症化することもある。リスクが高い乳幼児を対象にした重症化予防薬はあるが、広く使える抗ウイルス薬やワクチンは存在しない。ただ最近になってウイルスの研究が進み、新たな手法によるワクチン開発が加速している。福島県立医大の橋本浩一准教授は「そう遠くない将来に効果的なワクチンが登場し、子どもやお年寄りを守れるようになるかもしれない」と期待する。
RSウイルスの電子顕微鏡写真(ゲッティ=共同)
RSウイルスの電子顕微鏡写真(ゲッティ=共同)

 

 ▽何度も感染

 新型コロナウイルスも肺炎を起こすが、私たちとRSウイルスの関係には大きく異なる点がある。RSウイルスは生後1歳までに半数以上、2歳までにほぼ全員がかかる。多くの人が一生のうちに何度も感染してある程度の免疫を持つ。このため大人はのどや鼻など上気道の軽い症状で済むことが多い。
 一方で初めて感染すると気管支や肺といった下気道で炎症が起きやすい。生まれて間もない赤ちゃんは重い肺炎のリスクが高まる。親やきょうだいが症状を自覚せずに乳幼児に広げることがあるので要注意だ。
 以前は秋から冬に流行することが多かったが、最近は夏ごろから感染者が増える傾向がある。感染防止にはマスク着用や消毒、手洗いが有効。コロナ流行が起きた2020年にはコロナ対策のおかげでRSウイルスの感染報告が減少した。
 だが翌21年には例年を上回るレベルの流行が起きた。RSウイルスに免疫を持たない子が増えていたため、翌年の対策の緩みで感染が一気に広がったとみられる。
 ▽研究が進展
 早産児や持病がある子どもの重症化を予防するためのモノクローナル抗体薬は実用化されている。ただ健康な子でも肺炎になって入院することがある。高齢者も含めて幅広い層をどうやって守るかが課題だ。
 医療資源に乏しい発展途上国では乳幼児の死亡が特に深刻。世界保健機関(WHO)は子どもたちに安全で効果が高く、低コストのワクチン開発を後押しする。
幼児へのワクチン接種の様子(AP=共同)
幼児へのワクチン接種の様子(AP=共同)

 

 RSウイルスのワクチンを巡っては1960年代に米国の臨床試験で死者が出て開発が足踏みした。「ただ最近10年ほどの間に研究が進展し状況が大きく変わった」と橋本さん。ウイルス表面にあって感染に重要な役割を果たすタンパク質の詳しい性質や形状が解明された。「ワクチンや薬の開発に必要な抗原や抗体を精密に設計することが可能になった」と説明する。
 ▽20種類
 現在では多くの製薬企業が次世代ワクチンに加え、新たな予防薬の開発に力を入れる。国際保健を推進する非営利団体PATHの資料によると、昨年9月段階で20種類のワクチンの臨床試験が行われている。第3相試験まで進んでいるワクチンには高齢者や妊婦を対象にしたものが含まれる。
 子どもの免疫を高めるのに有効と考えられているのが妊娠中の母親に接種する「マターナルワクチン」。母体から赤ちゃんに抗体が受け渡され、免疫を持った状態で生まれる。米モデルナは新型コロナで実用化したmRNAを使う手法で小児や高齢者のワクチンの開発を進めている。
 「人類はワクチンによって天然痘を制圧することができたが、風邪のウイルスとの付き合いは将来も続いていくだろう」と橋本さん。「RSウイルスワクチンの実用化は数年先になるかもしれないが、子どもやお年寄りの重症化を広く防ぐことができるようになれば開発の意義は大きい」と話す。(共同=吉村敬介)

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