【編集後記】Vol.395=「ファイターズブランド」

東京を東西に走る私鉄・京王線の明大前駅から特急電車に飛び乗ると、目の前の座席に関学大アメリカンフットボール部の竹田行彦OB会長が座っていた。
「これだけたくさんの人が乗っているのに、奇遇やね」と竹田会長。3年前にも同じ状況になったことを思い出し、お互いマスクの下で苦笑いした。
5月3日、東京都調布市にあるアミノバイタルフィールドで、明大と関学大の「定期戦」が行われた。
新型コロナウイルスの影響で中止が続いていた伝統の一戦は、3年ぶりの開催だった。
1947年に始まった春に行われる伝統校同士の定期戦は、関東のアメフトファンにとっては学生王者・関学大を見ることができる貴重な機会である。
好天に恵まれたこの日もスタンドには多くの観客が訪れ、甲子園ボウル4連覇中の「ファイターズ」のプレーを見守った。
関学大サイドのバックスタンドは特に多くのファンで埋まった。
在京のファイターズOBだけではなく、卒業生が母校の誉れをひと目見ようと集まるのも「関西学院」という組織の特徴だ。
関学大の大村和輝監督は、目的である遠征に参加した64人を全て起用したことを明かし「攻守ともに、経験不足が露呈した。(交代メンバーを出した)後半はレベルが落ちた。だいぶ頑張らないといけない」と課題を挙げた。
長年続いた明大との春の試合は「定期戦」という形では今年が最後になる。
大村監督は「来年以降は、関東のいろんな大学と試合をしたい。(関東に遠征しての試合は)できればやりたいのだが、新型コロナウイルスの影響もあって難しい」と言った。
大学としては、感染リスクがある長距離の移動は、できるだけ避けてほしいと考えるのは当然だ。今回も感染して参加できなかった有力選手が何人かいた。
前述の竹田会長には、定期戦が終わることを残念がる旧知の明大OBから連絡があったそうで、時代の流れとして仕方ないと説明したという。
関東学生連盟の発表では、観客数は1032人。興行面でも「ファイターズブランド」の根強い人気を再認識した憲法記念日だった。(編集長・宍戸博昭)