18・19歳を形式論で扱わず、今後も保護処分中心に   視標「改正少年法施行」

2022年05月04日
共同通信共同通信

 改正少年法が4月1日に施行された。改正法は18・19歳を「特定少年」とし、幾つかの点で他の年齢層の少年とは違う扱いをする「特例」を設けている。選挙権年齢や民法上の成年年齢の引き下げなどにより、この年齢層が「責任ある主体として積極的な社会参加が期待される立場」となったことが、その理由とされる。

 例えば、特定少年に対する保護処分は犯罪の行為態様や結果といった「犯情の軽重」を考慮して決められる。また、刑事裁判や刑罰を受けさせるために家裁が検察官に送致(逆送)する事件の対象が広がり、原則的にこの措置をとるべき事件(原則逆送)の対象も法定刑の下限が1年以上の懲役・禁錮刑にあたる罪の事件にまで拡大される。

 しかし、20歳未満を「少年」とする少年法の定義は変更されていない。18・19歳は少年として健全育成を目的とする働きかけを受ける。その事件は引き続き、全てまず家裁に送られ、調査・審判、保護処分の対象になる。成長途上にあるこの年齢層は資質・環境の面で各種の働きかけに対して柔軟に変わり得るので、少年司法による対応が有効でもあるからである。

 実は、この年齢層の少年法での位置づけに関しては、法制審議会(法相の諮問機関)では結論が得られず、判断を委ねられた国会により「少年」とすることが決められたという事情がある。

 事の経緯からしてこの国会による判断が持つ意味は重い。「特例」の運用にあたっては、他の法律で「おとな」の年齢であることから来る「期待」に依拠した形式論に終始せず、それに見合うだけの成長があるのか、特定少年の実像と非行の背後にある事情を個別具体的に踏まえる必要がある。

 保護処分決定の「特例」としての「犯情」の考慮も、その趣旨は国家による過介入を防ぐことにある。「犯情」概念を独り歩きさせ、「おとな」としての行為責任(犯罪行為にふさわしい刑事責任)を強調することで非行の重さに見合った処分を積極的に課することは許されない。判断の中心は、あくまでその少年が主体的に非行から脱するための課題とその方法(保護処分が必要かどうか)であるべきである。

 検察官送致の検討にあたっても、非行の背後にある環境や資質に関係する諸事情を考慮しなければならない。原則逆送事件も例外とせず、全事件を家裁に送る制度の趣旨は、人間行動科学に立脚する家裁調査官の社会調査や少年鑑別所の鑑別で非行の背後にある成長発達上の課題を明らかにすることにある。

 犯罪の外形となる事実のみを切り取り処分を決めることは、その趣旨を没却する(無視する)だけでなく、本質的な問題を放置し、健全な育成も再犯防止も難しくする。

 改正法には、起訴(公判請求)後の実名などの報道解禁も含まれている。犯罪からの立ち直りの途上にある者との向き合い方や情報化社会における不利益な個人情報の扱いへの関心は高まっている。事件発生から相応の時間が経過し、公判の結果、家裁移送の可能性も残る段階であえて実名などを報じることの社会的な意義が一層問われる。

 改正法は、施行5年後の検証と見直しを予定する。国会の付帯決議が、少年の健全な育成という法の目的や理念に合致した運用を求めていることを、法施行に当たり改めて確認しておきたい。

 (新聞用に2022年3月31日配信)

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