遺体安置所と化した町、自作自演「あり得ない」  緊急ルポ「破壊されたブチャ、ボロディアンカ」

2022年04月22日
共同通信共同通信

 ウクライナ侵攻で、ロシアによる市民への残虐行為が明らかになり、民間人の殺害に国際社会からの非難が高まっている。ウクライナの首都キーウ(キエフ)で取材を続けているフリージャーナリストの綿井健陽さん(50)が、近郊のブチャやボロディアンカに入り、無残なまでに破壊された現地の様子をルポした。

破壊されたロシア軍の車両とブチャの民家=6日(撮影・綿井健陽、共同)
破壊されたロシア軍の車両とブチャの民家=6日(撮影・綿井健陽、共同)

 キーウでは、ロシア軍による空爆や地上部隊侵攻の恐れが少なくなり、徐々に街に人出や車の行き来も増えてきた。だが、キーウ近郊の町は、ロシア軍の車両残骸の「墓場」と遺体の「安置所」のような様相になっている。

 3日、小雪が舞う中、キーウからウクライナ西部に延びる幹線道路を車で走ると、ロシア軍の戦車と装甲車が黒焦げのまま多数放置されていた。弾薬や不発弾も路上に散らばっている。脇道に入ると、1人のロシア軍兵士の遺体が装甲車の陰の草むらに横たわっていた。顔だちから推測するにアジア系の、小柄な若い男性だ。

 その前では、ウクライナ人兵士らが記念撮影をしていた。これまでアフガニスタンでもイラクでも、敵側兵士の遺体の前で勝ち誇ったように記念撮影をする光景を何度も目撃した。

 5日、近郊のブチャに入ると、今度はウクライナ人の遺体の数々だった。不自然に曲がった黒焦げの遺体には、切り裂かれた衣服や銃創の跡がある。「集団墓地」のような形で、遺体が地中から次々と発見されている。

ブチャで発見された6人の遺体が、袋に入れて運ばれていた=5日(撮影・綿井健陽、共同)
ブチャで発見された6人の遺体が、袋に入れて運ばれていた=5日(撮影・綿井健陽、共同)

 生き残った人は、怒りをあらわにした。妻と2人で暮らしていたアレクサンダーさん(80)は、空っぽの小さなポリ袋を携えて食糧配給の列に並んでいた。家の中にはジャガイモしか残っていない。電気も水も止まり、庭で火をおこして日々をしのいだ。39日間、パンは一切れも食べられなかった。

 3月8日、2人のロシア兵がアレクサンダーさんの自宅に突然押し入り、機関銃を向けて携帯電話を取り上げた。1人は北西部プスコフ州から、もう1人は南部ロストフ州から来たと言った。

 「彼らは家の窓やガレージを銃で撃ち、大きな穴が開いた。その後、15人ほどの男たちと戦車が家の前の通りにやって来た。戦車からの砲弾は私たちの上を飛んでいった。ロシア兵はハンマーやバールで、周辺の家のドアを次々と破壊した」

キーウ近郊ブチャの食糧配給所に並んでいたアレクサンダーさん。ロシア軍の破壊行為を訴えていた=5日(撮影・綿井健陽、共同)
キーウ近郊ブチャの食糧配給所に並んでいたアレクサンダーさん。ロシア軍の破壊行為を訴えていた=5日(撮影・綿井健陽、共同)

 アレクサンダーさんは1960年代にモスクワに3年間滞在し、建築の仕事に携わったことがある。「ロシア人はプロパガンダにさらされたことで、大きく変わってしまった。彼らは私たちを兄弟と呼んでいたが、何者でもない存在にしてしまった」

 首都北西の町ボロディアンカを訪れると、カラスが不気味に何度も鳴き続けていた。街はブチャ以上に、空爆と砲弾で徹底的に破壊されていた。これまで同様、特に高層の集合住宅が標的にされている。

 現地で取材していた地元放送局「キーウ・テレビ」の記者ボグダンさん(28)は、これまで数々の攻撃された現場を訪れた。ロシア側が主張している「ウクライナによる自作自演」との言い分には、あきれた口調で「あり得ない」と言い放った。

ボロディアンカでは、集合住宅が軒並み破壊されていた=6日(撮影・綿井健陽、共同)
ボロディアンカでは、集合住宅が軒並み破壊されていた=6日(撮影・綿井健陽、共同)

 「ロシアはいったい何を言っているのか。この破壊された様子と住民を間近で見ればわかることだ。ウクライナ軍が破壊したと言うのなら、なぜ住民の誰も目撃しておらず、証言もないのか」

 そして、こう付け加えた。「ロシアが唱えるプロパガンダの正体は、私たちがここで取材して発信することで主張の矛盾が証明され、明らかになっていくだろう」