消費者被害の対策不十分  視標「18歳成人スタート」

2022年04月20日
共同通信共同通信

 民法の成年(成人)年齢が1日に20歳から18歳へ引き下げられた。2018年に成立した改正民法がいよいよ施行の日を迎えたのである。明治の民法制定以来、実に125年余りも維持され、国民生活に定着してきた社会制度の大変革だ。

 既に選挙権年齢は18歳に引き下げられ、飲酒・喫煙は20歳が維持される中で、民法の成年年齢引き下げが意味するのは、満18歳になると、親の保護(親権)の対象から外れ、1人で契約ができるようになる一方、親などの法定代理人の同意を得ずに契約した場合、契約を取り消せる「未成年者取り消し権」を失うことである。若年者の消費者被害の拡大を招くと真剣に懸念されている。

 若年者は、社会経験や知識が乏しく、友人関係などの人間関係の影響も受けやすいため、消費者トラブルに遭いやすい。特徴的なものとして、マルチ商法、キャッチセールス、エステなどの美容医療契約、インターネット取引でのトラブルなどが挙げられる。

 これらの被害に遭っても消費者が契約時に未成年であれば、契約の勧誘文言や態様、消費者側の認識などにかかわらず、未成年だったという理由だけで契約を取り消して救済が図れる。未成年者取り消し権は絶大な効力を持っている。

 そして、この権利はむしろ被害予防面での役割が大きい。事業者は苦労して契約させても後で簡単に取り消される可能性があるため、そもそも未成年者を勧誘しない。要するに未成年者は取り消し権という「鉄壁の防波堤」に守られている。

 18、19歳は、成年年齢の引き下げによって、この防波堤の外に出されてしまった。

 18歳は高校3年生の間に迎える年齢であり、高校卒業時の進学・就職・転居といった人生の節目に成年ということになる。未成年者取り消し権を持たずに社会への接触が急増するので、悪質業者のターゲットにされる危険性が極めて高い。

 このような事態に対する十分な消費者保護制度の手当てが急務だ。特に悪質業者が知識・経験・判断力不足につけ込んで勧誘し、契約させたような場合、未成年者取り消し権に代わる、契約の取り消し権を消費者契約法に創設することが期待される。学校などにおける実践的な消費者教育の充実も重要である。

 しかし、消費者契約法に改正民法施行時までに盛り込まれたのは、恋愛感情を利用したデート商法などによる契約の取り消し権にとどまる。

 今国会に上程された消費者契約法改正案も、逃げられない場所へ同行して勧誘する場合など限定された場面の取り消し権で、「つけ込み型」勧誘を広く対象とする取り消し権は創設されていない。

 また消費者教育を充実させる努力はなされてはいるものの、実践的教育の普及には至っていない。予想される消費者被害拡大への手当てが不十分なまま、成年年齢の引き下げに突入してしまったのである。

 若年者が社会形成に参画し活躍することは歓迎すべきだが、前提として若年者が安心安全に生活できる社会が必要だ。若年者が消費者被害によって明るい未来や希望を奪われないよう、十分な消費者立法や施策を急いで実現することが社会全体の責任である。

 (新聞用に2022年3月31日配信)