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伝統の景観守り、ゲストハウスに再生も 「黒江の町並みを活かした景観づくり協定=黒江JAPAN」(和歌山県海南市、第4回優秀賞)

2017.11.30 16:08
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独特の街並みには格子のある家屋が残る
独特の街並みには格子のある家屋が残る

 

 紀伊水道を望む和歌山県海南市。黒江地区は、古くから漆器の生産で知られてきた。地元産業の長い歴史とともに歩んできた街並みは、独特のたたずまいを見せている。貴重な光景を地域の資産として守り、生かしていこうと始まった住民の取り組みは、着実に成果を上げている。

 ▽騒がしさが消え、落ち着く路地へ

 黒江地区に残る古い家は、道路に面してのこぎりの歯のように並ぶ。なぜ、こうした建て方となったのかを巡っては諸説あるというが、路地に立って眺めると、家々が肩をそびやかして並んでいるようにも見える。格子や白壁がある家もあり、静かな空気の中で歩いていると、日常の騒がしさが次第に遠のき、気分が落ち着いてくる。
 ほかでは見られない独特で歴史的な景観を守ろうと、住民らは2011年、「黒江の町並みを活かした景観づくり協定」を結び、地区外のサポーターも参加して活動をスタート。毎月、会合を開くなどさまざまな取り組みを進めてきた。
 まず、力を入れたのは地域の実態把握だ。かつては100軒余りが立ち並んでいたとされるが、取り壊されて更地になったり、持ち主が不明の空き家になったりするケースが増加していた。ただ、和歌山大学の教授や学生と連携して意識調査を行ってみると、伝統のある街並みに愛着を持つ住民は少なくないことが分かった。しかし、住宅の老朽化が進むと、維持・保存に手間をかけるより、改築・新築する方が効率的だと考えるのもやむを得ない面もある。
 そのため、古い建物への関心や意識を高めてもらおうと、住民や学生らとの意見交換会を実施。漆を入れていた古いおけを手直しして花などと合わせて約20カ所に飾ったり、ちょうちんやベンチを置いたりする活動も展開。コンサートなども開き、訪れる人たちに「漆器のまち」をアピールしてきた。

道ばたには漆のおけを生かしたオブジェが飾られている
道ばたには漆のおけを生かしたオブジェが飾られている

 

ゲストハウスへの再生を目指す古民家を見るメンバーら
ゲストハウスへの再生を目指す古民家を見るメンバーら

 

 ▽イタリアの学生を招く計画も進む

 積み重ねてきた活動は新たな実を結びつつある。2年ほどかけて県外に住む所有者と粘り強く協議した結果、築150年とされる空き家を譲渡してもらうことで合意。地区に宿泊施設が乏しいことから、ゲストハウスとして活用することを目指して改装作業を始めた。
 漆器販売を通じて知り合ったイタリアの料理学校の学生らが18年夏、地区を訪ねる計画が進んでいる。歓迎の場をゲストハウスにしたいと作業に力が入る。メンバーには建築士もおり、それぞれの得意分野を生かし取り組みを続ける構えだ。
 活用できる見込みの空き家は、ほかにも複数あるという。漆器販売に携わる池原弘貴代表は「借りたい人もいる。持ち主との仲を取り持ち、移住につなげることができたら、地区の活気が高まる」と意欲を燃やしている。                   (共同通信社 伊藤祐三)

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