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蔵の街、遊覧船でゆったり 「うずま川遊会」(栃木県栃木市、第3回優秀賞)

2017.10.16 15:58
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船頭唄を聞きながら、ゆっくりと遊覧船は進む
船頭唄を聞きながら、ゆっくりと遊覧船は進む

 

 白壁の蔵と黒塀の家並みが残る栃木県栃木市。その間を流れる巴波川。水面には、笠をかぶった観光客を乗せた遊覧船がゆっくりと進んでいく。よく通る声で船頭が歌う「栃木河岸船頭唄」が流れると、時の流れも遅くなったように感じる。
 「一番の収穫は活動が自立できたこと」。「うずま川遊会」の青木良一会長は笑顔を浮かべる。市の中心部を流れる巴波川で、遊覧船の運航を柱にした地域おこしに取り組む。有志で始めた活動は、年間3万人前後の乗船客を集めるまでに成長。行政の補助金に頼らない住民主導による取り組みが軌道に乗った。

 ▽小江戸の風情を生かす

 江戸時代、栃木市一帯は巴波川を中心とした水運で江戸と結ばれ、交易の拠点として栄えた。舟を使えば陸送より大量の物資を運ぶことができ、江戸までは3日ほどで到着したという。コメやしょう油、ほうきなどの雑貨を主に出荷。市内には当時のにぎわいをしのばせる蔵が多く残っている。
 「小江戸」といわれるまちの風情を生かし活性化につなげようと、栃木市などは蔵が立ち並ぶ光景をアピールしてきた。2005年には、市や観光協会、商店会連合会など8団体が参加して「うずま川遊会」が発足。川を中心に、活気を取り戻す試みが本格化した。
 遊覧船のアイデアも、こうした活動が母体となった。目の前に川はあるが、船に乗ったことのある人は少ない。それではと、船を借りてイベントをしてみると人気を集めた。行政も協力して自前の船を造り、06年から週末の運航をスタート。好評だったことから、09年からは年間通じての運航になった。
 乗船客は年を追って増え、11年には、遊覧船の事業を担当するNPO法人を設立して体制を整えた。船頭も11人に増加。遊覧船は約150メートルの距離をゆったりと往復し、船頭の解説や唄を聞きながら蔵のまちをのんびりと眺める。

船頭らと話す青木良一会長(右から2番目)
船頭らと話す青木良一会長(右から2番目)

 

旧家を改装した事務所からも小江戸の風情が
旧家を改装した事務所からも小江戸の風情が

 

 ▽足もとの川を観光拠点に

 「やらないで終わるのはどうだろうか。思いついたことは、みんなやってみた」。青木会長は振り返る。ゼロから始めた遊覧船を知ってもらおうと、さまざまなイベントを仕掛けた。行灯を使ったライトアップや、こいのぼりなど季節に合わせた飾り付けを展開。着実に実績を積み上げてきた。
 遊覧船事業を担当するNPO法人には、ともに取り組んできた経営者や税理士ら約20人が参加する。乗船料を中心にした収入で経費を賄えるようになり、栃木市も「まちづくりの理想型」(観光振興課)と評価する。
 川沿いに建つ旧家を借り受けて、事務所に改装。雰囲気のある建物から黒塀をくぐって乗り場に出るのも楽しい。一時は排水で汚れ、ふたで覆ってしまう案も検討された川が観光拠点に成長。足元の資源を宝に変えた青木会長らは、今も定期的に清掃を続けている。(共同通信社 伊藤祐三)

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