若い人も「ロコモ」懸念 月数回の運動でリスク減 「1万人調査」で判明

2022年03月11日
共同通信共同通信
 手すりにつかまらないと階段を上れない。片足立ちで靴下をはこうとするとバランスを崩す。こんな兆候が出たら「ロコモティブ症候群(ロコモ)」に要注意だ。骨や関節、筋肉、神経などが組み合わさった運動器がうまく働かなくなった状態。加齢が大きな要因として知られるが、東京大病院の山田恵子助教らのチームは、20代や30代でも少しずつ機能低下が起き始めるのを日本人の調査で確かめた。ただ月数回の運動でリスクが下がる可能性も判明。山田さんは「まずは少しでもいいので体を動かしてほしい」と話す。
日本人を対象とした「ロコモ1万人調査」を分析した東京大病院の山田恵子助教
日本人を対象とした「ロコモ1万人調査」を分析した東京大病院の山田恵子助教

 

 ▽3段階
 健康で自覚症状がない人でも運動器の機能は長い間に低下し、放っておくと要介護になりかねない。日本整形外科学会は多くの人に知ってもらうためにロコモの概念を提唱した。
 低下レベルに応じて3段階に分類。「ロコモ度1」は低下が始まった段階だが問題なく暮らせる人も多い。「2」は低下が進み、横断歩道を青信号で渡りきれなかったり、低いいすから立ち上がれなかったりすることが起きる。いずれ生活に支障が出るリスクが高い。
 「3」はさらに進んで立ち上がるのにも歩くのにも苦労する。社会参加に支障が出るレベルだ。運動器に何らかの病気が起きていて治療を要する例も多い。
 レベル判定には、座った状態から片足や両足で立ち上がるテストや、横方向の最大歩幅を調べるテスト、体の痛みやしびれ、生活上の問題などを尋ねるアンケートで総合的に判断する。方法は同学会がホームページで紹介している。
 
 

 

 ▽少しずつ低下
 同学会は2017~19年に日本人を対象に「ロコモ1万人調査」を実施。全国の大学や医療機関の協力を得て、20~89歳のロコモ度と生活習慣などとの関係を調べた。
 山田さんらは約1万人のうち十分なデータが得られた8681人を分析。すると全ての年代で年齢とともにロコモのリスクが上昇し、高齢になるほど進行が加速していた。若いうちは個人差が小さいが、高齢者では元気な人とロコモ度が高い人の差が大きい。
 興味深いのは、40歳未満でも年を重ねると「ロコモ度1」のリスクが上昇すること。20代でも運動器の働きが少しずつ低下するらしい。
 「自動車に例えるとタイヤや車軸などの足回りにガタが出始めた状態」と山田さん。「エンジンに相当する心臓がいくら丈夫でも、足回りが悪いのを放っておくとそのうち故障が起きる。低下が緩やかでも安心はできない」と指摘する。
 ▽個人ごとに
 勇気づけられる材料もあった。ロコモと運動習慣との関係だ。
 毎日運動する、スポーツジムに通うなど体をよく動かす人でロコモのリスクが低いのは予想通り。だが運動の頻度が「月に数回」の人でもリスクが低下していた。
 心臓病などの予防にはかなりの運動量が必要との報告があるが「ロコモには少しの運動でも効果があるのかもしれない」と山田さん。忙しい人に朗報と言えそうだ。
 野菜や豆、魚介類や肉などバランスの良い食事がロコモ予防に役立つ可能性も示された。食生活は長期にわたって体に影響する。肥満や高血圧、糖尿病、貧血などがロコモを悪化させるリスク要因である可能性も分かった。
 男性に比べて女性のロコモのリスクが高いこともあらためて確認。女性はもともと加齢に伴ってさまざまな体の不調が出やすい。「性別や年齢、生活習慣に応じた個人ごとの予防策を考えていく手掛かりにしたい」と山田さんは話す。(共同=吉村敬介)

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