(690)陸上で地味な鳥が水中で輝く カワガラス

木の枝に鳥がとまっている。ずんぐりした体。黒っぽいけれど、灰色や茶色がまじったような深みのある色だ。
福島県猪苗代町のアクアマリンいなわしろカワセミ水族館で、カワガラスを初めて見た。日本の動物園水族館では、ここにしかいない。
毎年、滝のうら側の岩のすきまなど決まった場所に巣を作る。
「谷川でつりをしていると、ビッビッと低い声で鳴きながら通りすぎます。警戒しているんです」と担当の石井桃子さん。
生態を調べるため、つかまえる許可をもらった。どんなふうにしてつかまえたんですか?
「親鳥に気づかれないように巣の近くでよく観察しました。卵を産んだ日や、ひながかえった日を知って、巣立つ直前のタイミングでひなをつかまえました」
ひなの間は小さいコオロギをあたえた。「もうおなかいっぱいだよ、というぐらい多めにあげて、ピーピー鳴いて『おなかがすいた』というときにまたあげて。1日5回えさをあたえました」
川に潜り、小魚や石の下にいる虫を食べる。「そのときタタタッと水中を歩く。水中の動きが注目です。ここでは朝か夕方がねらい目です」
夕方、来てみたら、何度か水の中にもぐってくれた。水中で体が銀色に光る。陸上では地味な鳥が、輝いた。(文・写真、佐々木央)=2021年9月配信
