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【編集後記】Vol.374=「我が盟友へ」

2021.10.15 15:14 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
日大グラウンドに掲げられた、甲子園ボウル優勝年度を示すボード=東京・桜上水
日大グラウンドに掲げられた、甲子園ボウル優勝年度を示すボード=東京・桜上水

 

 大学のクラブの合宿所で出された朝食のハンバーグに、何の疑問もなくソースをかけて食べる。でも、彼だけは違った。

 タマネギなどの野菜を手際よく刻み、ケチャップを絡めてフライパンで焼き直す。

 一手間かけて、格段に美味しくなったハンバーグをみんなに振る舞う。そんな男だった。

 

 高校時代は大した選手ではなかったが、持ち前のガッツで2年から守備のLBのレギュラーポジションを獲得した。

 パスディフェンスは苦手だったけれど、動物的な鋭い勘で先を読み、試合では相手のランプレーのほとんどを一人で止めていた。

 4年時には、多くの部員からの支持を得て主将に選ばれた。鬼監督と学生の間に立ち、チームを日本一に導いた優秀なリーダーだった。

 

 学生時代に「同じ釜の飯を食った仲間」の彼が、全国紙の社会面だけでなく一面コラムにも「容疑者」という呼称で登場し世間を騒がせている。

 母校日大の理事という立場を利用して不正を働き、大学に損害を与えたという背任容疑で逮捕された。残念というより情けない。

 

 3年前の「悪質な反則タックル問題」では、精神的に追い込まれて泣く泣く反則をしてしまった当該の選手とその家族を恫喝したことが、大学が設置した第三者委員会の調べで明らかになり、その事実を認め理事を辞任している。

 その彼が、大学の最高権力者の判断で理事に復帰したのは昨年の9月だった。

 

 悪質タックル問題同様、今回の事件の背景には組織や個人の「私物化」がある。

 私利私欲に駆られ、薄っぺらい拝金主義者に成り下がったかつての我が盟友には、恩師の言葉を思い出してほしい。

 「プライドとは、人間が命がけで守るもの」

 

 東京地検特捜部が動いたという事実は重い。真実を明らかにして、償うべき罪は償う。

 人生の宝物である「フェニックス」の名誉を、これ以上汚すのはもうやめよう。君ならそれができるはずだ。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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