意味不明の解散こそ国難 視標「衆院選で問われるもの」

2017年10月20日
共同通信共同通信
大阪国際大准教授 谷口真由美

 「国難突破解散」と語った安倍晋三首相の言葉を聞いて「国難はこっちのほうや!」と思わず画面に向かってツッコミを入れてしまったのは、私だけではないだろう。

 そもそも、どうして今衆院を解散するのか、首相の記者会見を聞いてもさっぱり分からなかった。どうやら、消費税の使い道を国民に問う解散だそうだ。2019年10月に10%に引き上げられる予定の消費税の使い道をいま問う? 現在の衆院議員の任期満了となる2018年12月の選挙で問うても十分だ。

 そして、新党「希望の党」を立ち上げた小池百合子東京都知事からは、もう消費税増税凍結の話まで飛び出してきて、ますます意味不明。

 今より国難な感じがしていたのは改造前の安倍内閣で、その陣容を入れ替え「仕事人内閣」が発足してまだ2カ月。仕事を始める前に「人づくり革命」もなされないままに、突然の解散で終わりを告げた。仕事人も革命も、陳腐な響きに成り下がった。

 森友・加計両学園の問題は、私たちの共有財産である国有地が、えらくお安い価格で払い下げられたり、大学に獣医学部を新設されるのが難しいと言われる中、なんだかトントン拍子に進んだり。

 それは、首相と関係者がお友だちだったからじゃないの? だからこそ、関係書類の隠蔽(いんぺい)が図られているのではないの? そんな疑惑の目が、あちこちから向けられていた。これに対して、関係があったら議員も辞める、丁寧に説明するとまで発言して、閉会中審査でそれは果たされたという首相。

 あれが丁寧というのなら、世間の丁寧の基準はずいぶんと緩くなるだろう。口調や態度は丁寧であったかもしれないが、文字で起こされたやりとりを読んでみると、本質的なことには何も丁寧に答えてないことがよく分かる。

 そして、解散は首相の専権事項なのか? 首相の解散権についての疑問も出始めた。この件は、今回の解散とは別にいつでも議論すべき話であるので、今後、誰が首相になろうが、どこが与党であろうが、きちんとすべきものだ。

 今回の解散、意味が分からないよね、となっても、その批判への受け皿となる野党が弱いのも事実であった。だからこそ、そこを突いたのが首相の思惑にあったのだろう。

 そこへ、小池知事の率いる希望の党が出現。当初は、当落線上にいる、もしくは落選しそうな議員たちの、当選したい希望がいっぱい詰まった党ができたのだと思った。集まってくる議員たちの節操のなさ、醜悪さが目に付いた。保守でもなく保身、そんな風に見えた。

 9月27日に発表された希望の党の綱領は「情報公開」「しがらみ政治からの脱却」「税金の有効活用の徹底」などを掲げて改革色を打ち出したものの、具体的な政策には言及がない。

 そこにきて日本を「リセット」するとか。「アウフヘーベン」はとても難解な概念で、調べても簡単には理解できないだろう。なんとなく、言葉は分かりやすいけれど、中身は分かりにくい。

 ここにきて、民進党が合流? 朝と昼と夜で情報が変わる。この目まぐるしさに付いていけていない。何を選択せよと言うのか。まさに、国難去ってまた国難だ。

  (2017年9月28日配信)