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【編集後記】Vol.372=「手腕試される若きリーダー」

2021.9.24 14:47 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
試合会場ではためく日大アメリカンフットボール部の部旗
試合会場ではためく日大アメリカンフットボール部の部旗

 

 仕方がないとはいえ、オンラインでの記者会見はどうも味気ない。質問に答える側の人となりや素顔が、画面からだといまひとつ見えてこないからだ。

 その分、言葉の選び方や話しぶりが注目されるわけで、その意味では関東大学リーグ1部TOP8の記者会見に出席した、日大OBで「フェニックス」の新ヘッドコーチ(HC)に就任した平本恵也さんの対応は秀逸だった。

 

 34歳は、記者会見に参加した8大学の監督、HCの中で最年少で、まず自身のHC就任に関してチームの公式ホームページなどでの発表が遅れていることをわびた上で、チーム作りの方針を自分の言葉でよどみなく丁寧に説明していた。

 

 平本さんは現在、大学を卒業後に就職した富士通に籍を置きながら、青学大大学院のビジネススクールで学んでいる。豊富な語彙を駆使した自然な語り口は、好感が持てた。

 3年の契約期間を満了し、8月いっぱいで退任した橋詰功前監督(立命大OB)のように、フルタイムでの指導は難しい状況だが、10月のリーグ戦開幕に向けて指導体制は整いつつあることを強調していた。

オンラインでの記者会見で質問に答える日大の平本恵也新HC=関東学生アメリカンフットボール連盟提供
オンラインでの記者会見で質問に答える日大の平本恵也新HC=関東学生アメリカンフットボール連盟提供

 

 10月3日の初戦は、昨シーズンに続いて関東のライバル法大が相手になる。優勝候補の両校にとって、この試合が今季を占う最も大事な一戦になるという構図も昨年と同じだ。

 「全ての責任は私にある」と覚悟を示した新HCは、いきなりその手腕を試されることになる。

 

 平本さんといえば、思い出すのは日大が17年ぶりに出場した2007年の関学大との「甲子園ボウル」だ。

 甲子園球場が改修工事のため、会場を大阪・長居陸上競技場に移して開催された第62回大会である。

 

 平本さんは当時まだ2年。4年と3年のQBが故障で出場できず、最上級生で固めたオフェンスでただ一人、下級生の平本さんが先発メンバーに名を連ねた。

 大会史上に残る激戦となった試合は、関学大が41―38で制したが、平本さんはチームの期待に応えて大活躍した。

2007年の「甲子園ボウル」は、激戦の末関学大が日大を41―38で破った=大阪・長居陸上競技場
2007年の「甲子園ボウル」は激戦の末、関学大が日大を41―38で破った=大阪・長居陸上競技場

 

 第4クオーターに94ヤードのTDパスを決めて30―27と逆転した時、この試合で一緒にテレビ解説をしていた関学大OBの山田晋三さんと顔を見合わせ「これぞ日大!」とうなずき合ったことを覚えている。

 

 あれから14年。「フェニックス」の底力を示した司令塔が、今度は指導者として母校を率いる立場になった。

 「彼は真っ直ぐな人。頑張ってほしいですね」。退任直後、平本さんに会って今年のチームを託した橋詰前監督も、若きリーダーにエールを送っている。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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