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エイズ治療40年の歩み 薬で抑えられる病気に 検査や意識啓発に課題

2021.9.21 0:00
 エイズの初めての症例が米国で報告されてから40年。世界中で流行して多くの人の命を奪ったが、効果が高い治療薬が次々に開発され、エイズウイルス(HIV)に感染しても発症せずに一生暮らせるようになった。それでも新たな感染者は後を絶たず制圧への道はなかなか見えない。国内では新型コロナウイルス流行でHIV検査が減ったのが懸念材料。東京大の岩本愛吉名誉教授は「いち早く感染を見つけて継続的な治療につなげるのが大切だ」と話す。
人の免疫細胞(大きな青い球)を攻撃するエイズウイルス(黄色い粒)(米国立衛生研究所提供)
人の免疫細胞(大きな青い球)を攻撃するエイズウイルス(黄色い粒)(米国立衛生研究所提供)

 ▽みとり

 1981年6月、米疾病対策センター(CDC)が、免疫低下に伴う肺炎を発症した5人の男性患者を報告した。後に「後天性免疫不全症候群(AIDS)」と呼ばれる病気だ。米国や欧州、アフリカ、アジアなどで次々に患者が見つかった。
 日本では85年に初めての患者を認定。HIVに汚染した血液製剤で多数の血友病患者らが感染した時期がある。各地でパニックが起きた。
 当初は打つ手がなかった。米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンは、ニューヨークの病院で働いていた医師が「若い人たちが次々に命を落とした。やがて患者をみとることを学んだ」と振り返る様子を紹介している。
 ▽目覚ましい開発
 一方で治療研究が世界中で加速した。HIVが83年に発見され、増殖を抑える最初の治療薬AZTが87年に承認された。副作用が少なく効果が高い薬の開発が続いた。
 岩本さんが患者診療に関わったのは94年ごろから。「最初はAZTしかなかったが、複数の薬を組み合わせる抗ウイルス療法が標準になり、長期生存が可能になった」と話す。
 多くの錠剤を1日に何度も服用する必要があったが、最近は1日1回1錠で済む薬も登場した。感染してもきちんと服用すれば体内でウイルスが増えるのを抑え続けることができる。パートナーに性行為でうつす心配はなく、健康な子どもの出産も可能になった。
 
 
 
 

 

 岩本さんは「先進国で流行したため開発が目覚ましかった。新型コロナワクチンと少し状況が似ている」と語る。
 ▽工夫が必要
 国連合同エイズ計画(UNAIDS)によると、2020年の世界のHIV感染者は3770万人。年150万人が新たに感染する。東欧や中央アジア、中東などで増加が目立つ。
 30年までにエイズ流行を終結させる目標を掲げるが厳しい状況。コロナ流行で治療が中断され、対策が後戻りする懸念も出ている。
 日本も安心できない。19年までの累積で国内のHIV感染者は2万1739人。診断時にエイズを発症していた患者9646人と合わせると計3万1385人になる。新たに報告された感染者とエイズ患者は合わせて1236人。ここ10年は減少傾向だが少ないとは言えない。
 20年前半はコロナ流行の影響で保健所によるHIV検査や感染に関する相談の件数が大きく減少した。検査を受けずに発症して見つかる「いきなりエイズ」と呼ばれる患者も少なくない。岩本さんは「安価で手軽な民間検査の普及など検査の利便性を高める工夫が必要だ」と指摘する。
 意識啓発にも課題が残る。製薬会社ギリアド・サイエンシズが昨年実施したアンケートでは、日本人の8割がHIV感染は「死に至る病」というイメージをいまだに抱いていた。
 薬の服用によってパートナーへの感染を防げることを知っている人も2割だけ。岩本さんは「子どもの頃からの教育や啓発によって患者への差別や誤解をなくすべきだ」と訴える。(共同=吉村敬介)

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