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セーリングの「より速く」を象徴 「フォイル」装備の混合ナクラ17級

2021.8.4 13:30 共同通信
ナクラ17級 出場した飯束潮吹(左)、畑山絵里組=江の島ヨットハーバー沖
ナクラ17級 出場した飯束潮吹(左)、畑山絵里組=江の島ヨットハーバー沖
 五輪のモットーは「より速く、より高く、より強く」だったが、国際オリンピック委員会(IOC)は東京五輪前に「共に」を付け足した。このモットーのうち、セーリング競技には「より速く」が最も当てはまるかもしれない。
 セーリングとヨットの歴史は、スピードの進化を追い求める歩みの積み重ねといってもいい。今大会の実施10種目で「より速く」を象徴しているのが混合ナクラ17級だ。3日、決勝のメダルレースが行われ、イタリアのルジェロ・ティタ、カテリナ・バンティ組が金メダルを獲得した。
 全長5メートル25センチの艇体が2本平行に並び、それぞれの艇体の中央部からは下に水中翼が伸びる。水中翼は途中で内側に「く」の字型に曲がっている。高さ9メートルのマストに最大で3枚のセールを展開。水中翼で艇体を海面から持ち上げ、条件がそろえば、速度は時速50キロを超える。2人乗りだが、男女混合種目のため、かじを握るスキッパーとクルーの役割を男女1人ずつで分担して操船する。
 多くのヨットは一つの艇体にマストとセールを装備するが、ナクラ17級のように艇体を二つ持つ双胴船をヨット界では「カタマラン」と呼ぶ。また、一つの艇体を「モノハル」、これに対し複数の艇体のヨットを「マルチハル」と分類することもある。
 余談だが、新聞、テレビで目にする「女子470級」「男子レーザー級」などは艇種の名称で、正式な種目名はそれぞれ「女子2人乗りディンギー」「男子1人乗りディンギー」となる。ナクラ17級の場合は「混合マルチハル」となっている。
 ▽水中翼は今大会から
 マルチハル種目が五輪に導入されたのは、1976年モントリオール大会から。ナクラ17よりもやや大型のトルネードが2008年北京大会まで、9大会で使用された。12年ロンドン大会ではマルチハル種目は実施されず、16年リオデジャネイロ大会で混合マルチハル種目としてナクラ17級が導入された。
 リオ大会後、ナクラ17級を水中翼化することが決定。東京大会から水中翼を装備、さらにスピードアップして、江の島の海を疾走した。
 水中翼は英語で「ハイドロフォイル」というが、ヨット界では略して「フォイル」または「フォイリング」と言うことが多い。新潟と佐渡を結ぶジェットフォイルや福岡-韓国・釜山間で運航していたビートルなども水中翼船で、通常のフェリーや定期船と比較して高速を売り物にしている。
 なぜ、水中翼だとスピードアップするのか。水中翼で艇体を海面から浮き上がらせると、水と接する面積が少なくなり、それに伴い、水による抵抗も減少するというわけだ。
 ▽存在感増す「フォイル」
 セーリング界での「フォイル」はブームともいえる状況になっている。ウインドサーフィンやモス級のような1人乗り小型ディンギーから、世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」や単独無寄港無補給の世界一周ヨットレース「バンデ・グローブ」などの大型艇、外洋艇もフォイルを装備する。
 フォイルに詳しいヨットデザイナーの永井潤さんによると「ざっくりしたイメージだが、モノハルに比べて、カタマランは1・5倍以上速い。モノハルでもフォイルなら2倍から3倍はスピードが出る」そうだ。
 「海のF1」とも呼ばれるアメリカズカップは、水中翼のカタマランで争われる。「今年の大会を見たら、50ノットは平気で出ている。時速100キロ近くですからね。モーターボートでもそんなスピードを出せるのはなかなかありませんよ」と永井さん。
 セーリングの「より速く」を追い求める歩みは、モノハルからマルチハル、そしてフォイルへと進んできた。五輪でも、フォイルの存在感はさらに増していく。24年パリ大会のウインドサーフィン種目では、フォイルで走るiQFOiL級が採用された。新しく実施されるカイトボーディング種目はフォーミュラカイト級で行われる。日本ではなじみがないが、やはりフォイルが付いたボードに乗った選手が、半円形のパラシュートのようなセールを操って推進力を得るものだ。
 パリのセーリング種目数は東京と同じ「10」。しかし、東京でナクラ17級だけだったフォイルは、男女のウインドサーフィン、男女のカイトボーディングが加わり計5種目に。セーリング種目の半数がフォイルの艇種になる。(共同通信・山崎恵司)