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「喝!」チャンス逃した走り幅跳び橋岡 日本、85年ぶりのメダルに届かず

2021.8.2 16:59 共同通信
男子走り幅跳びで6位だった橋岡優輝=国立競技場
男子走り幅跳びで6位だった橋岡優輝=国立競技場
 陸上男子走り幅跳びの橋岡優輝が、6回目に8メートル10を跳んで6位に入賞した。日本勢の入賞は1984年ロサンゼルス五輪で7位に入った臼井淳一以来で実に37年ぶりのこと。「よくやった」と褒めるべきかもしれないが、今回はメダル獲得へ千載一遇のチャンスだっただけに、橋岡には「喝!」を入れたい。
 ▽ファウル覚悟の跳躍を
 2日前の予選では8メートル17を跳び、1回で決勝進出を決めている。体調もよさそうで、メダルへの期待が膨らんだ。1回目にファウルをせずに8メートル前後の記録を残し、そこからは思い切った跳躍に切り替えるのがこの種目の常道だ。しかし、この日は1回目がファウル、2回目に7メートル95、3回目が7メートル97。午前中の決勝となって、各選手とも動きにやや精彩が感じられず、8メートルを越えなくてもベスト8入りできた。
 ここまではよしとしよう。問題は4回目以降の跳躍の内容だ。ベスト8が決まった3回目まででは、実力者のエチェバリア(キューバ)が8メートル41でやや抜けていたが、メダルラインは8メートル20~30になると見えた。この時点で7位の橋岡は8メートル36の自己記録を持ち、勝負強さには定評があるだけに残り3回のジャンプに期待した。
 ところが、4回目ファウル、5回目7メートル94と勝負をかけるべきラウンドで大胆なジャンプが見られなかった。大逆転で金メダルをつかんだテントグル(ギリシャ)が5回目に8メートル15で3位に浮上し、最終回にエチェバリアに並ぶ大ジャンプを繰り出したのとは対照的。国内の大会ではファウルながら大ジャンプを何度も見せてきたエースが、この日は借りてきた猫のようにおとなしかった。
 試合後に「体の調子自体は悪くなかったが、かみ合わせの部分がうまくいかなかった」と語っていたが、結果的には8メートル21で銅メダルとなった低調な大会。1936年ベルリン大会の田島直人以来となる85年ぶりの表彰台は、手を伸ばせば届くところにあった。「ファウル覚悟」の大ジャンプが見たかった。
 ▽なぜか低調な走り幅跳び
 走り幅跳びは世界的にこのところ低調だ。2008年北京大会の優勝記録は8メートル34で、続くロンドン大会は8メートル31、前回リオデジャネイロ大会も8メートル38だった。旧国立競技場で1991年に開かれた世界選手権では、マイク・パウエルとカール・ルイスの米国勢の競り合いの末、パウエルが8メートル95の世界記録を樹立。ルイスも追い風参考記録ながら8メートル91を跳んで空前の「ロングジャンプ・バトル」を繰り広げた。
 五輪4連覇を果たしたルイスという史上最高のジャンパーの存在が大きかったが、パウエルのほかにも当時はラリー・マイリックス(米国)やイバン・ペドロソ(キューバ)といった脇役も多彩だった。
 それに比べると、近年の走り幅跳びには主役を張れるスター選手が見当たらない。短距離界にはウサイン・ボルト(ジャマイカ)というスーパースターが君臨したが、ルイス以後のタレント不足はどうしたことか。ボルトの登場で100メートルの世界記録は9秒74から9秒58まで大幅に更新されたが、スプリント界のレベルアップが走り幅跳びに生かされていないのは残念なことだ。
 この日は脚を痛めて同記録での銀メダルに終わったエチェバリアは「9メートルも期待できる」とパウエル氏が評する大器。22歳の橋岡も8メートル50を大きく超える記録が望める前途洋々のジャンパーだ。これからの世界の走り幅跳び界の中核で活躍できる素材なので、さらなる精進を期待したい。(スポーツエディタ―・船原勝英)