1964年の悪夢再現か 水泳ニッポン瓦解の危機

2021年07月27日
共同通信共同通信
男子400㍍個人メドレー予選のレースを終え、引き揚げる瀬戸大也。決勝進出を逃した=東京アクアティクスセンター
男子400㍍個人メドレー予選のレースを終え、引き揚げる瀬戸大也。決勝進出を逃した=東京アクアティクスセンター
 女子400メートル個人メドレーの大橋悠依の金メダルで目立たないが、競泳の不振が深刻だ。最初の種目だった男子400メートル個人メドレーの瀬戸大也、同200メートル自由形の松元克央。金メダル候補と目された2人が予選落ち。ベテラン入江陵介も準決勝で姿を消した。27日まで決勝は全体のほぼ3分の1、12種目を終えたが、そこに登場した日本選手は大橋1人きりである。
 ▽相次ぐ惜敗
 瀬戸は今季の世界ランキング1位で予選を迎えたが、8位と0秒32差の9位で決勝進出を逃した。番狂わせは翌日の松元に続いた。17位に終わった松元は、準決勝を0秒02差で逃した。同100メートル背泳ぎの入江は準決勝9位。決勝に100分の1秒足りなかった。
 相次ぐ惜敗。地力がないわけではない。予選で1分46秒69だった松元は、同タイムの選手とその夜のうちに準決勝で棄権者が出た場合の繰り上げ出場順位決定戦、スイムオフを争い、1分46秒06で泳いだ。一晩で2レースの疲労の中、予選なら11位相当のタイムである。しかし、準決勝で棄権者は出ず、残ったのはむなしさだけだったが。
 競泳は個人競技。しかし、精神的にチームで戦う側面が強い。日本代表の一体感醸成に、過去の監督は心を砕いた。主要大会前は海外長期合宿が常だったが、コロナ禍で個別強化中心になっていた。五輪期間中も地元のメリットを生かそうと、選手村に入らない選手がいた。チームワークの点で、メリットはデメリットに変わったのではないか。
 ここにトップバッター、瀬戸の失態が追い打ちを掛けた。瀬戸は300メートルまで悠々トップだったのに、決勝への体力温存を図ってギアを上げず、後続選手に次々抜かれた。瀬戸の予選敗退が、チームの空気を凍らせた、という。五輪初出場の松元は緊張感に縛られ自分を見失った。
 競泳は午前に予選、夜に決勝を行うのが通常の大会日程。しかし今回は米NBCテレビの要求を受け、逆になった。ただ、夜にタイムが上がる傾向は、競泳選手の体に染みついている。瀬戸、松元とも予選から好記録を連発する外国選手の大波にのみ込まれたとも言える。精神面の揺れがあったにしろ、力を発揮できる何かを欠いていたのだ。
 ▽瓦解しつつある日本
 理由は一様ではないだろう。金メダル候補故に、決勝に目が向き、足元がおろそかになっていなかっただろうか。近年の世界での好成績を背景に、水泳界に「お金」が回るようになった。個人的にもスポンサーが付いて豊かになった。これが競技寿命の長期化につながっている好側面であるものの、例えば瀬戸の言動を見ると、どこかに甘さが漂うのも事実だ。原因を選手個人の精神面の緩み、に求めるのは短絡的に過ぎるが。資金面のゆとりが組織の厳しさを欠く結果を招いた、との指摘も聞く。水泳NIPPONの看板だった少数精鋭も変わってきた。スタートでつまずき、チームは瓦解(がかい)しつつあるのかもしれない。
 1964年の東京大会も惨敗だった。実績のある選手に頼って、台頭してきた欧米の若手に屈した。女子100メートル背泳ぎで前回ローマ大会銅メダルの田中聡子が日本新を出しながら4位に終わったのが象徴した。唯一のメダルは最後の最後、男子800メートルリレーで手にした「銅」である。
 空気感を変え、悪夢再現を払拭(ふっしょく)するには、恐れを知らない生きの良い新鋭に期待するしかないだろう。リレー出場の池江璃花子は、負のスパイラルの中でどう力を出し切るか、パリ五輪へ向けて良い経験としてほしい。(共同通信・小沢剛)

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