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「落ち目」からの復権へ第一歩 バレーボール男子が快勝

2021.7.25 16:12 共同通信
ベネズエラに勝利し喜ぶ日本=有明アリーナ
ベネズエラに勝利し喜ぶ日本=有明アリーナ
 五輪の開催国は団体球技のほとんどに出場枠があり、いつもは予選突破もままならない競技がすんなりと本大会でプレーできる。少子化が進み、スポーツに親しむ子どもが減りつつある日本で、1チーム多人数で戦う団体球技はその恩恵にあずかって状況を変えたいだろう。残念ながら映像を通してだけれど、東京五輪はそれぞれのスポーツの魅力を訴え、少しでも多くの人の興味を引く絶好の場となる。そのための「武器」は、強さであり、好成績にほかならない。
 バレーボールとて例外ではない。特に男子は2008年北京五輪以来3大会ぶりの出場となった。かつて日本で一、二を争う人気スポーツだったころを知る記者には、今の「落ち目」ぶりは寂しい限り。復権を目指す日本は、まず男子がベネズエラをストレートで下して第一歩を記した。
 ▽もう一度チャンスが巡ってきた
 見ていて気持ちのいい勝利だった。第1セットは競り合い、一時は13―16とまでリードされたが、エースの石川祐希を中心に焦らず対処した。ミドルブロッカー山内晶大が3連続でブロックを決めるなど、6連続で得点してひっくり返した。この流れを逃さず、続く2セットは主導権を与えずに連取した。
 この白星、男子にとってなんと29年ぶりである。今の中垣内祐一監督が主力だった1992年バルセロナ五輪の5~8位決定予備戦で、EUNに勝って以来だった。ベルリンの壁が崩壊し、ソ連が解体された後の五輪で、EUNは旧ソ連のチームという時代だ。その次は3大会おいた北京五輪で、1次リーグ5戦全敗と、まさに出場するのに精いっぱいという感じだった。
 チーム最年長の34歳、清水邦広は1勝もできなかった北京の屈辱を知る。雪辱の気持ちは人一倍だろう。「もう一度チャンスが巡ってきたという思いを込めて戦いたい」と五輪を迎えた。
 若い選手も、この大会の重要性を理解して臨んだ。チーム最多の15点を挙げた石川は、イタリアのプロリーグで武者修行中だ。海外で研さんするなかで「日本のバレーボールの人気は落ちていて、もっと知ってほしい。そうするには代表で勝つしかない」という思いを持つ。
 ▽今は昔
 五輪では、女子が1964年東京、76年モントリオール、男子は72年ミュンヘンで金メダルを獲得するなど合計9個のメダルを持つ。団体球技でダントツの実績を誇り、世界選手権やワールドカップ(W杯)などの国際大会は日本で毎年のように開催され、多くの観客動員、高い視聴率を誇った。でもそれも今は昔―。
 72年五輪の主力だった森田淳悟さん(73)は長年、母校の日本体育大で監督などを務めた。「もうね、長身選手がバレーに来なくなった」と現状を憂う。「50年前、僕たちの時代は運動神経のいい子は、何が何でもバレーだった」のだが…。旧東欧圏を中心に強豪がそろった時代から、イタリアなど西欧にもプロリーグが盛んになり強国が増えた。対照的に日本の戦力は低下し、背の高い子どもはバスケットボールに流れた。
 今回の男子12人の平均身長は189・0センチで、200センチ超えは2人だけ。森田さんがいたミュンヘンの平均は190・0センチ。日本男子の平均身長はこの40年余りで3センチぐらい高くなり、背が低いリベロ導入を勘案しても、もう少し高くなってもいいものだろう。八村塁らを擁する今回のバスケットボール男子は平均196・0センチで、200センチ超えは5人もいる。最近の子どもたちがどちらを選んだか、明らかだろう。
 ▽もう1勝、さらに1勝
 森田さんは「強ければバレーに来ていた。強くなければ魅力がない」と分かっているだけに、久しぶりの五輪への活躍に期待は大きい。「日本からミスをしなくなった。サーブも良くなった」と変化を感じる。この後カナダ、イタリア、ポーランド、イランと対戦する。1次リーグを突破するにはもう1勝したい。準々決勝の組み合わせを考えると、さらに1勝できれば面白い。チームの愛称「龍神」は天空を自在に駆け巡り、強さと気高さを象徴するという。石川は「テレビに映る。そこでいろいろな方に見てもらえる」と、無観客のコートでも将来を見据えて球を拾い、つないで打つ。(共同通信・三木寛史)