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健康寿命を延ばすヒント 自治体政策にも反映を 国立6医療機関が提言

2021.4.23 16:11
 体と心の健康を保ちながら長く暮らすには―。国立がん研究センターなど六つの国立医療機関が、日本人の健康寿命を延ばすための総合的な提言をまとめた。がんや糖尿病、心臓病や認知症など、さまざまな病気の予防に役立つヒントを分かりやすく具体的に示した。個人の取り組みに加え、国や自治体の政策にも反映させて多くの人の健康を向上させるよう求める。同センターの津金昌一郎・社会と健康研究センター長は「自分で実行できていない点があれば、まずはそこから生活を改善してほしい」と話す。
提言を発表する国立がん研究センターの津金昌一郎・社会と健康研究センター長(中央)ら=2021年2月、東京都中央区
提言を発表する国立がん研究センターの津金昌一郎・社会と健康研究センター長(中央)ら=2021年2月、東京都中央区

 ▽脱たばこ

 提言は「喫煙・受動喫煙」「飲酒」「食事」「体格」「身体活動」など10項目に分けた。現在までの国内外の研究成果を基に信頼性の高い病気の予防法を列挙した。
 「エビデンス(医学的根拠)がしっかりしていて現状で最善のものを盛り込んだ」と津金さん。心臓病は国立循環器病研究センター、認知症などは国立精神・神経医療研究センター、糖尿病は国立国際医療研究センターなど、各機関の専門性を生かしたオールジャパンの内容だ。
 特に強調するのが“脱たばこ”の重要性。「たばこは吸わない」「他人のたばこの煙を避ける」と明確に言い切った。喫煙や受動喫煙はがんや循環器病、高血圧、糖尿病などさまざまな病気のリスクを高める。妊婦や未成年は特に要注意だ。
 
 

 

 ▽10分多く運動
 多量飲酒も病気のリスクを高める。男性は1日に日本酒1合または瓶ビール1本、女性はその半分の量にとどめるよう推奨する。飲めない人に強要するのは禁物だ。
 日々の食事は健康な体をつくって加齢の衰えを補う。年齢に応じて、多すぎず少なすぎず、偏りすぎないバランスのよい食事を心掛けたい。
 体は痩せすぎても太りすぎても健康リスクが生じる。ライフステージに応じた適正体重を維持するのが重要だ。加齢によるフレイル(虚弱)に陥りがちな高齢者は低体重に気を付けるべきだ。
 日常的な運動はがんや循環器病、糖尿病のリスクを下げ、うつ病を防ぐ効果もある。まずは現状より1日10分でも長く体を動かすことから始めよう。歩行かそれ以上の運動を1日に60分するのが目標。高齢者は無理せず毎日40分ほど体を動かすことが大切だ。
 
 
 ▽健康格差
 他の項目では、ストレスに上手に対処し、孤独を避けて社会関係を保つ、質のよい睡眠をとることが心身の健康に役立つと指摘。肝がんの原因となる肝炎ウイルスや胃がんを引き起こすピロリ菌の検査を受けることも推奨した。高齢者はワクチン接種によるインフルエンザなどの予防が有効。定期的な健康診断や適切な検診は病気の予防や早期発見に役立つ。出産後初期の授乳は母子ともに病気のリスクを下げる効果があるとされる。
 ただ個人の行動だけでは対処できないリスクもある。「健康の社会的決定要因」の項目では、国や地域の間、社会の中に存在する“健康格差”に目を向けるよう訴える。「欧米では受動喫煙の厳しい法規制があるため、個人にたばこの煙を避けるよう言う必要はない。日本の対策は不十分だ」と津金さん。国や自治体は格差をなくすための施策を講じる必要がある。
 今回の提言はいわば中間報告で、2030年に最終版をまとめる。国立がん研究センターの井上真奈美予防研究部長は「質の高い研究結果が出たら反映させて順次アップデートする。具体的な推奨値や数値目標も増やしたい」と話す。
 提言は国立がん研究センターのホームページに掲載されている。(共同=吉村敬介)

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