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スーパーボウルでMVP 小柄な名WRジュリアン・エデルマンが引退発表

2021.4.13 12:53 生沢 浩 いけざわ・ひろし
引退を発表したペイトリオッツのWRジュリアン・エデルマン(AP=共同)
引退を発表したペイトリオッツのWRジュリアン・エデルマン(AP=共同)

 

 「フォックスボロよ、永遠に」。これがWRジュリアン・エデルマンが、ペイトリオッツファンに贈った最後の言葉だった。

 ペイトリオッツでQBトム・ブレイディ(現バッカニアーズ)のナンバーワンターゲットとして活躍してきた34歳のエデルマンが、12年間のNFL生活に終止符を打つ決意を固め、自身のSNSで引退を発表した。

 

 「僕のキャリアの中で簡単なことなど一つもなかった。そして思った通り、この引退の発表もそうだ。すべての車輪が外れるまで走り続けると言ってきたけど、ついにその時が来たようだ。難しい決断だったが、自分と家族のためには正しい決断だったとも思う。ペイトリオッツの一員として引退できることは光栄だし、誇りに思う」とエデルマンは述べた。

 

 SNSに投稿されたビデオは、無人の本拠地ジレットスタジアム内に置かれた一脚の椅子のクローズアップから始まる。

 エデルマンが椅子に座ると、彼がドラフト7巡で指名されたときや数々のキャッチシーンの実況音声が流れる。

 音声が途切れると、おもむろにエデルマンが語り出す。昨年の膝のけがが引退の直接の理由になったことを明かし、これまで関わってきたすべての人々への感謝の言葉を述べた。

 球団施設内のミールサービスのスタッフに真っ先にお礼を言うなど、苦労人らしい一面ものぞかせた。

 そして、締めくくりに地元のファンに向けたメッセージが冒頭の言葉だった。SNS投稿のタイトルにも使われている。

 

 長年ともに戦ったブレイディは、エデルマンがMVPを受賞した第53回スーパーボウルの時に一緒に撮った写真をSNSに掲載した。

 その写真にはあご髭が伸びたエデルマンが映っており、ブレイディは「君の髭を似合わないという人は多かったが、僕は大好きだった。なぜなら、君の髭が伸びているということは僕らがプレーオフという重要な舞台を戦っている証拠だったから」とエデルマンが験かつぎをしていたことを明かし、「君はいつでも7巡指名のアンダードッグだった。誰も君を正しく評価しなかった。君はいつでも結果を出すことで評価を決めさせたんだ」と、エデルマンの努力をたたえた。

 

 エデルマンは2009年にペイトリオッツに入団した。ケント州立大時代にはQBだったが、WRに転向してのNFL入りだった。

 NFL入りにあたって、WRにポジションを変えて成功した選手は少なくないが、最終ラウンドでの指名というところが、それほど大きな期待を背負っていたわけではないことを示している。

 

 身長178センチ。NFL選手としては小柄というだけで、指名候補から外されてもおかしくなかった。

 ただ、エデルマンにとって幸運だったのは、同じチームのQBにブレイディがいたことだ。

 ブレイディは絶妙のタイミングと抜群のコントロールでパスを投げることのできるQBだ。どんな経路をたどろうと、決められたスポットに正しいタイミングで走りこんでさえいれば、ブレイディはそこにボールを投げてくれる。

 

 ワイドオープンであれば身長の不利など関係ない。エデルマンに必要なことはディフェンダーを振り切るクイックネスと、自分をターゲットにしたパスは絶対に落とさないキャッチングテクニックを身につけることだった。

 もちろん、一朝一夕で習得できるテクニックではない。ブレイディやビル・ベリチックHCからの信頼を得るにも時間がかかった。

 そして、その才能が開花したのが2013年シーズンのことだった。先発レシーバー陣の一角を任されるようになり、初の1000ヤードレシーブを達成したのだった。

 

 他チームのエースレシーバーとは違い、スロットのポジションで起用されることの多かったエデルマンだが、LBやSとの競り合いにも負けない体づくりに励み、フィールド中央で存在感を示した。

 ブレイディがファーストダウン更新したいときに、真っ先に探すのがエデルマンだった。それほどエデルマンはブレイディに頼りにされる存在となっていたのだ。

 

 ラムズと対戦した第53回スーパーボウルでは、10回のパスキャッチで141ヤードを稼ぎMVPに輝いた。

 最終スコアが13―3でディフェンシブな試合だったが、その中で着実にパスキャッチと距離を重ねて勝利に貢献したことが評価された。いかにもエデルマンらしい仕事ぶりだった。

2018年12月のジェッツ戦でボールに飛びつく、ペイトリオッツのWRジュリアン・エデルマン(AP=共同)
2018年12月のジェッツ戦でボールに飛びつく、ペイトリオッツのWRジュリアン・エデルマン(AP=共同)

 

 ブレイディがペイトリオッツを去った昨年は、新QBキャム・ニュートンとのコンビネーション確立が期待された。

 しかし、膝を故障して手術をしたためわずか6試合の出場に終わり、真価を発揮できなかった。

 この膝の故障でエデルマンはペイトリオッツのフィジカルテストをクリアできず、チームから契約を破棄された。その直後の引退表明だった。

 

 「NFLでエリートと呼ばれるために必要なものが勝利、チャンピオンシップ、そして実績であるならば、ジュリアンはそのすべてを持っている。それだけで彼のキャリアは誰にも引けを取るものではない。だが、彼がたどってきた道筋やその長さを振り返るとき、彼が成し遂げたことはより崇高さを増すのだ」

 ベリチックHCの発表した声明である。エデルマンの努力を間近で見てきた指導者のこの言葉こそ、最高の賛辞であるに違いない。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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