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がんの体重減少に注意 食事と運動が効果的 フレイル防止に応用も

2021.3.12 0:00
 がんになると体重が減る現象はよく知られている。そのままだと体力が落ちて治療がうまくいかなくなるため、適切な体重管理が必要だ。京都府立医大と静岡県立静岡がんセンターのチームは、適切な食事と運動を組み合わせて体重減少を効果的に防ぐためのプログラムを開発した。高齢のがん患者でも自宅で無理なく続けることができるのが特徴。京都府立医大の高山浩一教授は「将来的にはがん患者に限らず、広く高齢者の体力と健康の維持に役立てることができそうだ」と話す。
京都府立医大の高山浩一教授(同大提供)
京都府立医大の高山浩一教授(同大提供)

 

 ▽悪液質
 特に注意が必要なのが「がん悪液質」だ。脂肪に加えて筋肉の量が減り続ける。増殖するがん細胞は、ただでさえ体に蓄えられたエネルギーを消費する。それに加えてがん細胞の周囲で起きる炎症反応によって、タンパク質や脂肪の分解が加速されることが最近になって分かってきた。
 「がん患者は体のエネルギー効率が二重に悪くなっている状態だ」と高山さん。初診時に患者の半数、終末期には8割が悪液質になっているとされる。痩せて自力で歩けず身の回りのこともできなくなると、厳しい治療には耐えられない。高山さんが肺がん患者約400人を調べると、体重が多く減った人ほど治療成績が悪く、生存率が低いことが分かった。
 一方で抗がん剤は吐き気や味覚異常などの副作用も起こす。高山さんは「食欲がない時はあまり栄養のバランスを気にせず、味付けを工夫して好きな物を何でも食べてほしい。カロリーが高いものがおすすめ」と話す。
 ▽相乗効果
 患者がリスクをあまり気に掛けていない側面もありそうだ。食欲不振や体重減少を心配する度合いは、患者本人より家族の方が高かったとのアンケート結果がある。
 高山さんはがん患者の食欲を増進させる薬「アナモレリン」を小野薬品工業と開発した。ただ、薬だけでは筋肉の減少を防ぐことができないことも分かってきた。
 そこで静岡がんセンター呼吸器内科の内藤立暁医長らと共同で進めているのが「NEXTAC(ネクスタック)臨床試験」。食事と運動の相乗効果で最初に低下しがちな下肢筋力の維持を狙う。
 
 

 

 2016年に患者30人を対象に実施した第1段階試験では、体重や身体機能が維持され、運動量も増えることを確認。130人が参加して進行中の第2段階試験では、食事や運動のアドバイスを受けた人と受けなかった人で効果を比較している。今年中に結果がまとまる見通しだ。
 ▽無理なく継続
 欧米では、ジムなどで運動器具を使って行う患者向けトレーニングもある。ただ「日本のお年寄りのがん患者にはハード過ぎる」と高山さん。「自宅で無理なく続けられるように負荷を減らす工夫をした」と説明する。
 下肢筋力トレーニングの例はこうだ。いすに座った状態から立ち上がる。座った状態で片脚を伸ばしたり、片膝を上げたりする。いすにつかまって片脚を横に上げる。健康な人なら簡単にできる。これを毎日続けることで筋力の低下を防ぐ。
 「食事は管理栄養士が、運動は理学療法士が患者ごとにアドバイスする。2カ月のプログラムが終わった後もどうやって続けてもらうかが課題」と高山さん。ウエアラブル端末を使って遠隔モニターし、やる気を維持することも検討している。
 高齢者のフレイル(虚弱)防止にも役立つ可能性がある。「加齢で筋力が低下するサルコペニアとがん悪液質のメカニズムは少し違うが、トレーニングそのものは誰にでも有効。将来は一般の高齢者を対象にした試験も考えている」と高山さんは話す。(共同=吉村敬介)

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