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コロナ禍で急造QBが出場 NFL第12週のブロンコス対セインツ

2020.12.2 12:14 生沢 浩 いけざわ・ひろし
セインツ戦でパスを投げるブロンコスのQBヒントン(2)(AP=共同)
セインツ戦でパスを投げるブロンコスのQBヒントン(2)(AP=共同)

 

 NFL第12週のブロンコス対セインツで、本職のQBが不在という異例の事態が起きた。

 

 新型コロナウイルスの影響で、登録されていたブロンコスの4人のQBがいずれも出場できなくなったためだ。

 

 急遽QBを務めたのはプラクティススクワッド(練習だけに参加する選手)に所属していた新人WRケンドール・ヒントンだ。

 

 ヒントンはウェイクフォレスト大学の3年生までQBを務め、4年生になるときにWRに転向した。

 

 NFLにはドラフト外で入ることになるが、トレーニングキャンプ後にブロンコスからリリースされ、9月にプラクティススクワッドの一員として再加入していた。

 

 

 ヒントンがQBとして最後に先発出場したのは2017年だったという。しかも、コロナに感染した選手が出たためにブロンコスではチーム施設が使えず、QBとして練習することなく試合に臨まざるを得なかった。

 

 セインツ戦では最初のオフェンスの4プレーはRBがワイルドキャットQBを務めたから、ヒントンは途中出場の扱いだ。

 つまり、ゲームブック(試合の公式記録)に記されるブロンコスの先発メンバーにQBがいなかったのだ。

 

 

 急造QBがNFLの公式戦で活躍できるはずもなく、ヒントンは13回のパス試投で成功はわずかに1回。被インターセプト2でパサーレーティングは0だった。試合は3―31と大敗した。

 

 それでもこの難しい状況で最後まで懸命にプレーしたヒントンにはチームメートのみならず、殿堂入りのQBカート・ワーナーや相手のセインツの選手からも称賛の声が上がった。

 

 

 コロナ禍ならではの事態だが、必ずしもブロンコスが不運だったとは言えないようだ。

 

 ブロンコスでは第3QBのジェフ・ドリスケルが新型コロナウイルスに感染した。先発QBドルー・ラック、2番手のブレット・リッピン、プラクティススクワッドのブレイク・ボートルズらはマスクを着用せずにQBミーティングなどでドリスケルと同室にいたため濃厚接触者と判断された。

 

 

 今季のNFLはチームにソーシャルディスタンスの維持とマスク着用を義務付けている。

 それに違反したとしてブロンコスは罰金を科され、来年のドラフト指名権の一つを失う可能性がある。つまり、今回の異常事態は自らの規則違反が招いたものだったのだ。

 

 

 ブロンコスはNFLに対して、セインツ戦の延期を申し入れたが受け入れられなかった。

 

 スティーラーズとレーベンズの試合が3度もリスケジュールになったのとは対照的だ(この試合はもともと11月26日に行われる予定だったが、両チームに感染者が出たために何度か変更され、最終的に12月2日の開催予定となっている)。

 

 

 ブロンコスの場合はスティーラーズやレーベンズと違って、クラスターがQBルーム内に限定されているというのが理由だ。

 

 もし、セインツ戦の延長が認められていればラックやリッピンが出場できる可能性があった。

 

 

 こうした事態はどのチームにも起こりうるのだが、特にQBに対してはより安全な策をとっているチームもある。

 

 ビルズやイーグルスはQBのうちの一人をチームに帯同させず「隔離」しているという。この選手はリモートでミーティングに参加する。

 

 QB不在を避けるための方策だが、今回のブロンコスを見てこれに追随するチームは増えるかもしれない。やはりどのような事態にも可能な限り備えたチームが有利なのだ。

セインツ戦でボールを持って前進するブロンコスのQBヒントン(AP=共同)
セインツ戦でボールを持って前進するブロンコスのQBヒントン(AP=共同)

 

 

 いよいよレギュラーシーズンは終盤に入り、地区優勝やプレーオフを懸けた戦いが本格化する。

 

 QBに限らず、主力選手を新型コロナウイルスから守ることはチームにとって不可欠で、これを怠ると痛い目に遭うことになる。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。英字新聞ジャパンタイムズの運動部長を経て現在は日本社会人アメリカンフットボール協会の事業部広報兼強化部国際戦略担当。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。大学時代のポジションはRB。日本人で初めて「Pro Football Writers of America」の会員となる。

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