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厳罰化する理由ない  核心評論「少年法改正」

共同通信編集委員 竹田昌弘

 あおり運転を厳罰化した改正道交法が今年成立したのは、各地であおり運転による被害が相次いだからだ。このように法律の制定や改正の理由となる事実を「立法事実」と呼ぶ。10月29日に法制審議会が上川陽子法相に要綱を提出した少年法の改正には、この立法事実がなく、改正する必要はないのではないか。

 要綱は、選挙権年齢や民法の成人年齢などが18歳以上となったことに伴い、法相が2017年、少年法が適用される「少年(少女含む)」を20歳未満から18歳未満とすることの是非などを諮問したことに対する答申だ。

 法制審では、成人年齢などとの整合性から適用年齢の引き下げを求める意見と、家裁による少年事件の背景調査や少年院収容などの保護処分は改善更生に役立っているので、18~19歳を少年法から除外すべきではないとする意見が対立した。

 その結果、要綱は従来通り、18~19歳の事件は検察官が家裁に送致するものの「18歳未満の者とも20歳以上の者とも異なる取り扱いをすべきだ」と提言。家裁は懲役・禁錮の下限が1年以上の罪(強盗や強制性交、放火など)を犯した疑いのある18~19歳を検察官に原則送致(逆送)し、刑事裁判にかけるよう求める妥協的な内容となった。

 現行の原則逆送は、16歳以上が殺人や傷害致死など、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪を犯した疑いのある場合に限られているのに対し、18~19歳は原則逆送の事件が拡大され、明らかな厳罰化といえる。

 しかし、19年版犯罪白書などによると、09年に刑法犯(主に刑法規定の罪)で摘発された少年は約10万8千人いたが、毎年減り続け、18年は約3万人にとどまっている。このうち18~19歳は4分の1の約7300人。

 摘発の激減は、少子化の進行が最大の要因だが、10歳以上の少年10万人当たりの摘発を見ても、09年の901人(成人10万人当たりの摘発は233人)が18年には270人(同174人)に。千人当たりに直せば、3人もおらず、その減少幅は成人を大きく上回っている。

 研究者によれば、これは防犯カメラによるセキュリティーの強化などに加え、インターネットの普及で生活が内向きとなり、外にいる時間が短くなったことが影響しているとみられる。こうした状況では、18~19歳の事件を厳罰化する立法事実は見当たらない。

 要綱には、18~19歳が起訴された場合、実名報道の解禁も盛り込まれたが、18~19歳は高校生や大学生、専門学校生が多い。地裁の裁判では、匿名で手続きを進める保護処分を選択し、家裁への移送も可能なので、実名報道の解禁は性急ではないか。就職や進学ができなくなり、再犯を促しかねない。

 そもそも、喫煙や飲酒の解禁は20歳以上のままで、裁判員も20歳以上から選ばれる。少年法をこれまで通り運用し、改善更生を図る家裁の調査や保護処分が機能している限り、刑法犯の摘発は今後も減り続けるだろう。

 (2020年10月30日配信)

名前 :竹田昌弘

肩書き:共同通信編集委員

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