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【編集後記】Vol.342

2020.9.11 14:08 宍戸 博昭 ししど・ひろあき
NFLの2020年シーズンの開幕戦、チーフス―テキサンズの試合前のセレモニー(AP=共同)
NFLの2020年シーズンの開幕戦、チーフス―テキサンズの試合前のセレモニー(AP=共同)

 

 米プロフットボールNFLの2020年シーズンが、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、現地時間の9月10日(日本時間11日)に開幕した。

 

 昨季のスーパーボウル覇者のチーフスが、地元カンザスシティーのアローヘッド・スタジアムにテキサンズを迎えた試合前に行われたセレモニーは、米国内で深刻化する人種差別の撤廃などへの連帯を訴える場になった。

 

 チーフスの選手は、黒人の国歌として知られる「リフト・エブリ・ボイス・アンド・シング」の演奏中も腕を組み、米国国歌が流れた際に片膝をつく選手の姿も見られた。

 

 新型コロナウイルスの感染予防策として、観客は収容人員の22%にあたる約1万7000人に制限した。

 チーフスは先住民をチームのモチーフとしているが、今季からは先住民を連想させる頭飾りの着用や顔へのペイントが禁止されている。

 

 NFLでは過去に「湾岸戦争」(1990~91年シーズン)や「米中枢同時テロ」(2001~02年シーズン)の影響で、スーパーボウルの開催が危ぶまれたことがある。

 

 ビルズのKスコット・ノーウッドが逆転を狙ったFGを外し、ジャイアンツが20―19で激戦を制した91年の25回大会は戦時下で開催され、試合前の国歌独唱を任された黒人女性歌手ホイットニー・ヒューストンの圧倒的な歌唱力とともに、今でもファンの記憶に深く刻まれている。

 

 いつ収束するのか予測できない、世界中を巻き込んだ「コロナ禍」のような状況下でのシーズン開催は、過去に例がない。

 家族の安全を第一に考え、今季の出場を見合わせた主力選手もいる。

 

 いまだに米国内にはびこる人種差別に、いち早く抗議の意思を表明したのはNFLの黒人選手だった。

 

 「IT TAKES ALL OF US」。一人一人が自分の問題として考えることの大切さを訴えた異例の開幕戦。

 人気ナンバーワンのプロスポーツリーグが、何をどう発信するのか。注目のシーズンが始まった。(編集長・宍戸博昭)

宍戸 博昭 ししど・ひろあき

名前 :宍戸 博昭 ししど・ひろあき

プロフィール:1982年共同通信社入社。運動記者として、アトランタ五輪、テニスのウィンブルドン選手権、ボクシングなどスポーツ全般を取材。日本大学時代、「甲子園ボウル」にディフェンスバック、キックオフ、パントリターナーとして3度出場し、2度優勝。日本学生選抜選出。NHK―BSでNFL解説を20年以上務めている。

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