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受診と運動で悪化防止を コロナ下も異変は救急車 脳卒中経験者への助言

2020.9.8 0:00
 新型コロナウイルス感染症は、特定の持病があると重症化しやすい。脳卒中を起こしたことがある人もリスクは高いとみられている。予防は大切だが、コロナを過度に恐れて受診を控えたり家に閉じこもったりすると、必要な薬や運動の不足により、脳卒中再発の危険を高める恐れがある。コロナ禍の長期化が確実視される中、脳卒中経験者が知っておきたいことを専門医に聞いた。
 ▽閉じこもりがち
 「新型コロナは重症肺炎だけでなく、全身の血管に炎症を起こし血栓(血の塊)をつくると分かってきた。脳卒中の患者さんには懸念材料です」
 日本脳卒中学会でコロナ対策に取り組む平野照之杏林大教授はそう語る。
 
 

 


 ウイルスが人体に感染する際に足掛かりにする受容体は、呼吸器のほか、血管の内側の細胞にもある。「脳卒中経験者は動脈硬化で血管が傷んでいる高齢者が多く、感染や炎症が起きやすい可能性がある」という。
 脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れる脳出血があるが、血栓をつくりやすいコロナの性質を考えると、より注意が必要なのは脳梗塞。再発予防のために処方される、血液をサラサラにする薬の服用や、血の巡りを良くする適度な運動が欠かせない。
 しかしコロナ感染を恐れるあまり、心配な傾向がみられるという。大阪市内でクリニックを開業する中山博文医師(日本脳卒中協会専務理事)は「自宅に閉じこもりがちな患者さんが目立つ。デイサービスに行くのを怖がり、運動不足になった人も多い」と話す。リハビリを休むと、関節や筋肉が硬くなるなど後遺症の悪化も心配される。
 電話で診療や薬の処方に対応する医療機関は増えており、家でできる運動もある。「かかりつけ医との接触をぜひ保って」と中山さんは強調する。
 ▽受け入れ制限
 脳卒中医療の現場はコロナの“第1波”で影響を受けた。平野さんら脳卒中学会は、緊急事態宣言発令中の5月中旬、脳卒中患者を24時間365日受け入れて専門的な治療を行う施設と学会が認定した全国922の脳卒中センターを対象に調査を実施。
 回答した806施設のうち、コロナ感染者への対応などのため、救急患者の受け入れに何らかの制限をした施設が全体の21・5%あった。制限した施設の割合が多いのは関東(35・0%)、近畿(31・4%)、北海道(30・6%)などコロナ感染者が多かった地域で、特に東京都、埼玉県では、受け入れを制限した施設が半数を超えていた。
 平野さんは「コロナの感染拡大に歯止めがかからないと、本来なら助けられる脳卒中患者を救えない事態が起きてしまう。それを防ぐために、個人レベルでは感染予防の徹底を。政策面では医療機関への支援が重要になる」と話す。
 ▽時間との闘い
(左から)脳梗塞の発症から2時間後、7時間後、15時間後の脳の病変(白い部分)の広がりを示した検査画像。一刻も早い治療が望まれる理由だ(杏林大提供)
(左から)脳梗塞の発症から2時間後、7時間後、15時間後の脳の病変(白い部分)の広がりを示した検査画像。一刻も早い治療が望まれる理由だ(杏林大提供)

 

 脳卒中の治療は時間との闘いだ。脳の組織は酸素や栄養の欠乏に弱く、血流が途絶えると壊死(えし)がどんどん進んでしまう。また、脳に詰まった血栓を溶かす薬は、安全に治療できる時間が限られている。このため、脳卒中を疑う異変に気付いたら、直ちに救急車を呼ぶことが求められる。
 具体的には、顔の片側が下がる、片腕に力が入らない、言葉が出ない、などの症状が突然現れるのが特徴だ。「コロナ流行下でも、迷わず119番してほしい。本人も付き添いの家族もマスクを着けて救急車に乗れば、感染リスクは大幅に低減できる」と平野さん。
 平野さんは「流行第1波では病院でもマスクなどの防護具が大幅に不足していたが現在は改善されている。患者さんも過度に心配しないでほしい」と話している。(共同=吉本明美)

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