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消える「クラウドノイズ」 観客入場制限のNFL

2020.8.19 11:41 生沢 浩 いけざわ・ひろし
本拠地開催の試合前、立ち上がって国歌を歌うビルズファン(AP=共同)
本拠地開催の試合前、立ち上がって国歌を歌うビルズファン(AP=共同)

 

 今シーズンのNFLのスタジアムでは「クラウドノイズ」がほとんど聞かれないことになりそうだ。

 

 大学フットボールではPac12やビッグ10など有力なカンファレンスが今秋のフットボール活動を断念する中で、NFLは9月11日の開幕に向けて予定を変更せずに準備を進めている。

 

 

 しかし、チームが「12人目の選手」と位置づける地元ファンの声援はかなり限定されたものになる。

 

 既にビルズ、ジェッツ、ジャイアンツ、レイダーズ、イーグルス、ライオンズそしてワシントンフットボールチーム(前レッドスキンズ)が今季のホームゲームを無観客で行うことを発表している(イーグルスとライオンズはシーズン中の見直しの可能性を残している)

 

 

 多くのチームは所属する州の決断に従う形だ。例えばニューヨーク州はスポーツイベントのライブ観戦やテールゲートパーティーを禁止する条例を発令した。

 

 従って、ニューヨーク州バファローに本拠地を置くビルズはその決定に従わざるを得なかった。

 

 

 ニューヨークという名前が付きながら、本拠地がニュージャージー州にあるジェッツとジャイアンツはメットライフスタジアムを共用するが、この2チームはNFLで最も早く無観客でのホームゲーム開催を決定した。

 

 シーズン序盤は少なくとも無観客で試合を主催するが、その後は状況を見て判断するというスタンスなのがテキサンズ、パッカーズ、セインツだ。

 

 これらのチームは観客動員を認めるにしてもキャパシティーをすべて埋める人数は期待できず、人数にして1万~2万の間になると思われる。

 

 

 昨シーズンのスーパーボウル王者チーフスは、キャパシティーの22%に相当する約1万6000人のファンをスタジアムに入れる予定だ。

 

 このようにスタジアムの収容人数の4分の1程度の観客動員でホーム試合を開催するチームが多くペイトリオッツ、コルツ、ジャガーズなどがそれにあたる。

 

 具体的な人数制限を設けているチームもある。レーベンズ(7500人)やラムズ(1万5000人)などがそうだ。

 

 

 これ以外のチームは具体的な数字を発表していないが、やはり通常の半分未満の観客で試合を行うことになりそうだ。

 

 ラムズと同じソーファイスタジアムを使うチャージャーズは態度を明らかにしていないが、ラムズと同様に1万5000人を上限にすると思われる。

 

 

 フットボールではクラウドノイズがファンの大きな楽しみであり、また選手にとってもアドバンテージとなる重要な要素だ。

 

 それが通常の4分の1程度の観客数では迫力が足りなくなるに違いない。

 

 NFLでは試合でスピーカーなどを使って人工的にクラウドノイズを起こすことは禁じられているから、やはりいつもとは違う静かな環境で試合が行われることになりそうだ。

 

 

 ただ、NFL中継に関してはバーチャルの歓声を入れる方向で検討されている。

 

 FOXなどは機械的に再現されたバーチャルクラウドノイズを放送に乗せる実験をすでに開始しているそうだ。

 

 テレビやネットを通じて中継を見ているファンにとって、違和感はあまりないのかもしれない。

 

 

 フィールド上で戦うチームにとって、クラウドノイズの有無は大きな問題だ。

 

 特にクラウドノイズが大きいことで有名なアローヘッドスタジアム(チーフス)やセンチュリーリンクフィールド(シーホークス)ではホームチームのディフェンスは大きな味方を失うことになる。これらへの対応も戦術の一つになりそうだ。

開幕に向けて練習するSSジャマール・アダムズ(33)らシーホークス守備陣(AP=共同)
開幕に向けて練習するSSジャマール・アダムズ(33)らシーホークス守備陣(AP=共同)

 

 

 アメリカではMLBやNBA、NHLなどがリーグ活動を開始、再開しているが、いずれもまだ無観客だ。

 

 限定的でも観客を入れて実施するNFLは、他のプロリーグの今後の興行に影響を与えることになるだろう。

生沢 浩 いけざわ・ひろし

名前 :生沢 浩 いけざわ・ひろし

プロフィール:1965年生まれ。上智大卒。1991年にジャパンタイムズ入社。大学時代のアメリカンフットボール経験を生かし、フットボールライターとしても活動。NHKーBSや日テレG+でNFL解説者を務める。「Pro Football Writersof America」会員。

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