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【コロナで変わる日常】(7) 無念の廃業 パチンコ店、客足鈍る

2020.8.10 7:00 共同通信

 1966年創業のパチンコ店が東京の片隅で静かに幕を下ろした。「コロナに負けたと認めたくない」。3代目店主の都築忠政(つづき・ただまさ)さん(45)は、使い込まれたパチンコ台を黙々と片付けた。

 大田区の商店街にある金龍(きんりゅう)は地元客に愛された店だった。「あの人今日も来てる」「最近当たってないな」。大半の客が顔見知りで、お決まりの席から鳴る出玉の音で様子が分かった。

 3月上旬の自粛ムードで急に客足が落ちた。元々経営は苦しく、店員の給与確保で精いっぱいに。先行きも見えず、まさに火の車の状態だった。「あいさつもせず、なし崩しで終わらせたくない」。休業の選択肢はなかった。

 緊急事態宣言の前日、廃業を決めた。自分の代で店を失う悔しさや5人の従業員の生活…。やり切れない思いや不安が矢継ぎ早に頭の中を巡った。

 最終日、常連客から閉店を惜しむ声が上がった。20年以上通い続けた田中富子(たなか・とみこ)さん(80)は「ここ全然出ないの」と笑いながら、「来れば誰か知り合いがいて、気晴らしができた」と寂しさを隠せない。

 休業要請に応じない同業者が非難される度、胸が引き裂かれそうだった。「存続のため開ける店を責められない」

 台は廃棄せず欲しい人に譲る。せめて記憶だけでも頭の片隅に残しておいてほしい―。所々色あせた店内には思い出が詰まっている。

(共同=仙石高記)

*写真・記事の内容は2020年6月5日までの取材を基にしたものです。