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潜在看護師に復職呼び掛け 新型コロナで現場逼迫 訪問ケアや介護需要も

2020.5.13 18:02
 新型コロナウイルス感染症への対応で看護師の人員が逼迫(ひっぱく)している。感染症対応のベッドを増やし、院内感染を防ぐ対策に追われ、その影響は新型コロナ肺炎の患者だけにとどまらず、一般病棟にも広がっている。日本看護協会(東京、福井トシ子会長)は、資格を持っていて現在は離職している「潜在看護師」の復職を要請するほか、患者受け入れ病院の看護師が偏見や差別にさらされているとして理解と支援を訴えた。
 ▽「辞めたい」の声
 看護業務は、特に緊急事態宣言が最初に出された7都府県など都市部で拡大の一途をたどる。
 症状の重い患者が入院する病院では、人工呼吸器管理などで手いっぱいだ。肺炎でなくとも全ての受診者が陽性かもしれないという前提での対処を余儀なくされている。
 関東地方の看護師の女性によると、勤務先の病棟では医療者の感染を防ぐ防護具(ガウン)やマスクが不足して使い捨てできない。いったん身につけたら6時間休憩なしで働く。
 トイレにも行きにくく水分摂取も控えめに。高機能マスクは息苦しく、仕事終わりには激しい頭痛も起きる。「鎮痛剤をのみ、疲労が取れないまま次の出勤を迎える。免疫力も低下しているはずだが仕方ない」と話す。
 感染症対策に不慣れな看護師も多く、知識や経験には大きな差があり、思わぬ危険を冒していることも。自らが感染する危険と隣り合わせの業務だ。守秘義務があって家族にさえ事情を説明できないストレスも強い。
 「一人で耐えるしかないのがきつい。職場で『辞めたい』という言葉はたびたび耳にする。辞める人が出てくるのも時間の問題だ」と話す。
記者会見で看護師の復職を呼び掛ける福井トシ子日本看護協会会長=東京都渋谷区(同協会提供)
記者会見で看護師の復職を呼び掛ける福井トシ子日本看護協会会長=東京都渋谷区(同協会提供)

 

 ▽訪問にも支障
 准看護師、保健師、助産師を含む看護職全般が、パンク寸前の状況だ。日本看護協会で労働問題と医療安全を担当する熊谷雅美常任理事は「看護職が次々に重症、中等症患者への対応に回され、それ以外の現場に影響が波及した」と説明する。
 熊谷さんによると、新たに発生した業務でも負担が増えた。例えば、無症状・軽症の陽性者を受け入れているホテルなどの宿泊施設での仕事。あるいは、在宅患者を看護する訪問看護ステーションも、感染管理の分だけ多忙になっている。
 「訪問看護の現場での人手不足と資材不足も深刻。防護具が不足しているため、訪問すれば感染を広げかねず、利用者や家族から『来ないで』と言われる事例もある」
 協会には、タクシーの乗車拒否や子どもの登園拒否、飲食店の入店拒否などのほか、子どもがいじめに遭ったという深刻な相談も寄せられている。
 ▽貴重な人材
 長期戦が予想されている現状に、福井会長は記者会見で、看護師資格を持っていて現在働いていない人の復職をあらためて全国に呼び掛けた。
 協会によると離職時に住所や氏名などを登録するデータベース「とどけるん」には今年3月末で9万2千人余りが届け出。法に基づき看護職の求人と求職をマッチングする「e(イー)ナースセンター」の昨年度の求職者数は6万7千人余りだ。
 
 

 


 熊谷さんは「現場を離れていた人がいきなり最前線に配置されることはない。現役看護師が感染管理に次々に動員されている代替として、助けてほしい」と訴える。
 医療機関や訪問看護の現場以外でも、介護施設や保育所、学童保育などの現場で業務が増えるのは必至の情勢。各種の電話相談の受け手としても貴重な人材となる。
 協会では「復職の意欲のある人は各都道府県ナースセンターに相談してほしい」としている。ナースセンター一覧は日本看護協会ウェブサイトに掲載中。(共同=由藤庸二郎)

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