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注目集める臨床工学技士 医療機器操作担う専門職 技士会理事長に聞く

2020.5.13 17:56
 新型コロナウイルス感染による重い肺炎の治療で人工呼吸器や人工心肺装置「ECMO(エクモ)」が注目され、こうした医療機器を扱う「臨床工学技士」の名も見聞きすることが増えた。医師や看護師など多くの専門職種が連携して患者の治療やサポートに当たるチーム医療においては“縁の下の力持ち”的な存在のため、あまり一般になじみがなかったが、一体どのような職種なのか。約2万人が所属する日本臨床工学技士会の本間崇理事長に聞いた。
インタビューに答える日本臨床工学技士会の本間崇理事長
インタビューに答える日本臨床工学技士会の本間崇理事長

 

 ▽日本独特
 ―どんな仕事か。
 1987年制定の「臨床工学技士法」で規定された国家資格です。医学と工学の両面を兼ね備えた専門医療職で、医師の指示の下、生命維持管理装置の操作や保守点検に携わります。ほかに心血管カテーテルや高気圧酸素治療などに関わる業務もあり、仕事は多岐にわたります。
 ―生命維持管理装置とは。
 人の呼吸や循環、代謝の機能の一部を代替したり補助したりする装置です。人工呼吸器や人工心肺装置、人工透析装置、補助循環装置など、さまざまな種類があります。
 ―チーム医療における技士の重要性は。
 機器に精通したスペシャリストとしてチームを支えます。現代医療に欠かせない存在です。世界を見渡しても、保守から操作まで幅広く担う例は他にありません。日本独特の職種です。
 ―現在の人数は。
 これまでに国家資格を取得した人は約4万7800人。2017年度の厚生労働省調査によると、病院での実働数は2万1千人余りです。
 ▽24時間態勢
手術室で機器を操作する臨床工学技士(手前)(日本臨床工学技士会提供)
手術室で機器を操作する臨床工学技士(手前)(日本臨床工学技士会提供)

 


 ―技士になるには。
 大学や短大、専門学校の臨床工学科などを卒業し、国家試験を受けて免許を取得します。試験の合格率は約76%です。
 ―新型コロナウイルスによる重症肺炎の治療でエクモは最後のとりでとも称される。動かすのに必要な人手は。
 エクモは使い始めると24時間態勢で管理しなければなりません。1日に最低でも医師3人、看護師4人、臨床工学技士2人ぐらいが必要です。技士には、呼吸や循環、代謝を総合的に判断し、医師に適切に報告し、その指示通りに機器を動かせる能力が求められます。臨床経験5年以上というのが一つの目安です。
 ―感染のリスクは。
 気管挿管や呼吸器の装着などでは、ウイルスを含んで空気中を浮遊する細かい粒子「エーロゾル」が発生しやすく、感染リスクは非常に高いですね。予防策の徹底が必要です。
 ▽生命に直結
 ―2月時点で国内のエクモは約1400台。政府はさらなる感染拡大に備え、エクモの増産を図る考えだが、扱う人材は確保できるか。
人工心肺装置「ECMO(エクモ)」の本体(日本臨床工学技士会提供)
人工心肺装置「ECMO(エクモ)」の本体(日本臨床工学技士会提供)

 

 人材は足りません。対策の一つは、育児休暇中の臨床工学技士の一時的復帰や、育休終了の繰り上げです。そのためには託児所への優先的入所や保育料などの財政的支援の検討を国にお願いしたい。また、退職や転職で現場を離れた人たちを一時的復帰で活用し、マンパワーが不足する医療機関に配置することも有効だと考えています。
 ―最後に、臨床工学技士という仕事の魅力は。
 私たちが扱うのは生命に直結する高度な装置ばかりです。しっかり保守点検することで治療がスムーズに運び、患者さんの命が救われる。そこに大きな喜びを感じます。
  ×  ×  ×
 ほんま・たかし 1958年、神奈川県生まれ。医療法人社団善仁会グループ(横浜市)安全管理本部長。日本臨床工学技士会では2017年5月から現職。(共同=赤坂達也)

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