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音楽とコラボ! 目指すのは「かっこいい」 BONSAIの魅力広める平尾成志さん

2018.2.23 16:00 西田あすか
ステージでパフォーマンスを披露する平尾成志さん
ステージでパフォーマンスを披露する平尾成志さん

 

 金色のはさみを手に、祈るようなポーズを取る一人の男。色鮮やかなライトがステージを照らす。疾走感のある音楽が鳴り始めると、リズムに乗った素早い動きで土台に土を盛りながら草木を植え合わせていく―。

ステージでのパフォーマンス
ステージでのパフォーマンス

 ほどなく、見事な枝振りの松を中央に据え自然の山を再現した作品がステージに姿を現した。盆栽師の平尾成志(ひらお・まさし)さん(37)は、音楽とコラボしたパフォーマンスを通じて、若い人にも親しみやすい、かっこいい盆栽(BONSAI)の魅力を広めている。
 一つの作品にかけるのはわずか20~30分。DJやバンドに合わせ、技術とアイディアを武器に一気に作品を作り上げる。これまでクラブや路上といった場所で披露してきた。
 徳島県に生まれた。長距離走の選手として推薦で京都産業大に進学。部活漬けの毎日を送っていたものの「自分の意志で決めた進路ではない」という思いがどこかにあった。
 転機は、たまたま東福寺を訪れたことだった。
 東福寺の本坊庭園は作庭家・重森三玲(しげもり・みれい)の代表作。敷石や植え込みを幾何学的に配置する現代的なデザインで知られる。「庭を見た瞬間、自分が抱えていた不安や悩みが消えていくようだった」。伝統文化を継承する仕事に就きたいと、卒業とともに戦後を代表する盆栽師の故・加藤三郎(かとう・さぶろう)さんに弟子入りした。
 5年の修行で基礎を徹底的に学び、盆栽園の管理を任されるまでになる。が、同時に、将来への不安が頭をもたげるようにもなってきた。「業界は縮小の一途。跡取りではない自分に何ができるのか」。

インタビューに答える平尾さん
インタビューに答える平尾さん

 自問する中でたどりついたのは、日本を飛び出し海外で自分の力を試すことだった。思い切った決断の背中を押してくれたのは「国の内外問わずいろんな人に広められる人間になってほしい」という加藤さんの言葉だった。
 盆栽は海外にも多くの愛好家がいる。平尾さんは、スペインを起点に、イタリアやアルゼンチンなどを訪れ、盆栽の技術や作り方を教えた。
 交流を重ねるうち、盆栽への考えや楽しみ方は環境や文化によって異なるということを知った。盆栽の素材となるのはその土地の気候や風土で育った植物。フィリピンでは、海水で水やりするマングローブの盆栽にも出会った。経験を重ねるにつれ、日本の様式にとらわれずに楽しむ姿に刺激を受けた。より自由な発想で盆栽と向き合いたいと思うようになった。

 


 現地では盆栽制作の実演を求められることが多かった。ところが制作には数時間かかるため、なかなか最後まで見てもらえない。いろいろ悩む中、試しにクラブやカフェで音楽とともに実演してみると、観客の反応に手応えを感じた。そこから試行錯誤を繰り返し、現在の形にたどり着いた。
 今のスタイルに対して「そんなものは盆栽ではない」と言われたこともある。でもそうした批判は受け流している。「若い人に『盆栽ってかっこいい』と思ってほしい」。伝統や格式はもちろん重要。だが「とらわれ過ぎてしまうと狭い世界だけのものになってしまう」。
 現在は活動の拠点を日本に置く。2016年にはさいたま市に盆栽園「成勝園」を開いた。盆栽に親しむきっかけにと、月2回のワークショップも欠かさない。

盆栽園で指導する平尾さん
盆栽園で指導する平尾さん

 夢は20年の東京五輪の開会式でパフォーマンスを披露することだ。「日本では盆栽は園芸のジャンル。芸術と呼ばれるところにまで持っていきたい」。(共同通信・映像音声部=西田あすか)