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厳寒の北海道でSLを楽しむ

2018.3.23 16:18 篠原啓一
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(上)釧路駅に入線する「SL冬の湿原号」、(下)記念撮影で盛り上がる観光客=標茶駅
(上)釧路駅に入線する「SL冬の湿原号」、(下)記念撮影で盛り上がる観光客=標茶駅

 乗り鉄とバードウオッチングの両方が楽しめるらしい。噂の真偽を確かめようと、2月のとある日、家人と連れ立って北海道に飛び立った。狙いはJR釧網線の釧路―標茶間48キロを往復する「SL冬の湿原号」の乗車である。

 蒸気機関車(SL)を楽しむのは結構悩ましい。雪に覆われた厳寒の釧路湿原を石炭の煙と蒸気を大量に吐き出して驀進するSLの姿は魅力だろう。しかし客車に乗ってしまうのでは肝心のSLは見えない。はたしてSLの旅とは…。

 釧路駅出発は11時05分。ホームには30分前に入線してきた。使われている機関車C11-171号機は、1940(昭和15年)製というから驚きだ。小豆色の客車5両をけん引する姿は黒光りして美しい。

 席は向かい合わせのボックス席になっており、この日は予約で満席だった。ちょうど中国の春節(旧正月)と重なったためか、3分の1は中国人観光客と思えた。

 ゴトン、定刻に発車した列車はすぐに釧路川鉄橋を渡る。橋のたもとの堤防に、たくさんの撮り鉄のみなさんが三脚を立てて待ち構えているのが見えた。思わず手を振っていると、車内にぷーんと塩辛い匂いが漂ってきた。そう、車内の一角に据えられた鉄製のだるまストーブでスルメをあぶる匂いだ。飲み物が欲しくなる。

 街中を抜け出ると、車窓は左が雪野原、右は冬枯れの樹林という風景が延々と続くようになる。家人は、樹林の中にエゾシカの群れを見つけた。牡鹿の角が勇ましい。窓の外には時折前方から白い煙が流れてきて、SL列車ならではの楽しい光景だ。

(上)線路のすぐそばの雪原でタンチョウが舞う、(下)車内のだるまストーブであぶる名物スルメ
(上)線路のすぐそばの雪原でタンチョウが舞う、(下)車内のだるまストーブであぶる名物スルメ

 走ること1時間、速度を落として茅沼駅に進入する寸前、線路脇の雪原(たぶん畑)に数羽のタンチョウを発見した。冬はここが給餌場になるのだという。SLの音に驚いたのか、何羽かが飛び立ってしまったが、残ったつがいが雪の上で飛び跳ねて優雅な舞を見せてくれた。まるで列車を歓迎してくれているかのように。

 終点の標茶駅では、1時間半の待ち時間となる。町を挙げての歓迎ぶりで、町内の飲食店や日帰り温泉施設まで送迎してくれるサービスもある。当方は、歩いて10分ほどの喫茶店を選び、イカスミで黒く仕上げた鶏の唐揚げ(北海道ではザンギと言う)をのせた「SLザンギカレー」をいただいた。

 標茶には機関車の向きを変える転車台がないため、機関車を釧路方向の先頭に付け替えても向きは元のまま。午後は日差しが雪に反射してまぶしくなってきたが、それでも外の気温はマイナスだった。

 さて、バードウオッチングはというと、タンチョウのほかに、釧路駅の上空でオジロワシとカラスの迫力ある縄張り争いを現認することができた。まさに「二兎を追う」ことができた楽しい旅だった(運賃片道1070円、指定席券820円)。

 ☆篠原啓一(しのはら・けいいち)1958年東京都生まれ。共同通信社勤務。今シーズンのSL運行は終了し、4月末からは湿原を渡る風がさわやかな「くしろ湿原ノロッコ号」が楽しめます。