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どこでも「電車でGO!」

2018.2.16 11:00 大塚 圭一郎
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(上)JR東日本が今年1月25日に最終運転した189系の「旧あずさ色」=神奈川県相模原市、(下)「電車でGO!プラグ・アンド・プレー」で、JR東日本の189系が急行「アルプス」として走るCG
(上)JR東日本が今年1月25日に最終運転した189系の「旧あずさ色」=神奈川県相模原市、(下)「電車でGO!プラグ・アンド・プレー」で、JR東日本の189系が急行「アルプス」として走るCG

 ゲーム機をテレビにつないだ次の瞬間、営業運転前の新型車両への試乗と、かつて親しんだ旧型車両との再会という“異次元体験”を同時に果たしたような不思議な気分に包まれた。

 昨年に20周年を迎えた電車の運転を疑似体験できる大ヒットゲーム、タイトーの「電車でGO!」(生みの親である齋藤晃氏が開発秘話を明かした過去の拙稿は、https://www.47news.jp/9160.html)の最新版「プラグ・アンド・プレー」を2月8日の発売に先駆けて遊んだ感想だ。

 出版大手KADOKAWA系列のインターネット通販、エビテン(ebten)が取り扱う新商品(税込み1万5984円)の大きな特色は、列車を加速させるマスコンハンドルとブレーキハンドルが付いた操作部分とゲームソフトが一体になっている点だ。

 つまり、画面さえあれば運転士気分を満喫できる「どこでも『電車でGO!』」と呼ぶべき仕様だ。タイトーから借りたデモ機を使い、1997年の第1作誕生以来のシリーズ愛好家の私は高揚感を覚えながら発売前の“試運転”に挑んだ。

 ところが、ひとたび電源を入れて運転できる区間と車両のメニューに表示されると、14年前にタイムスリップしたかのような懐かしさにとらわれた。収録されているベースの作品は、家庭用ゲーム機向けでシリーズ最後の新作ソフトとして2004年に発売された「電車でGO!ファイナル」なのだ。もっとも、現在のテレビに合わせて画面の大きさをワイド化し、画質の解像度も高める改良が施されている。

 遊べる区間は、東京都中心部を一周する山手線、中央線の東京―高尾(東京都)、JR西日本の大阪市内を一周する大阪環状線、東海道線の京阪神を結ぶ区間の京都―神戸と「ゴールデンルート」と呼ぶべき華やかさだ。東京都西部の中央線沿線の住民で、共同通信社の大阪支社経済部在任中は大阪府内に6年間住み、家内の実家がある兵庫県をしばしば訪れる私にとっては親近感を持つ路線ばかりだ。

 その中でも飛びついたのが、車両の“世代交代”がめまぐるしく進んだ中央線だ。02年に姿を消した急行「アルプス」を八王子から新宿まで走るダイヤでは、国鉄時代の1970年代に製造された189系の運転体験を楽しめる。特急「あずさ」に使われていた白地の塗装と窓回りを青系の色にした「旧あずさ色」で、最後の1編成が長野県での廃車、解体のため今年1月25日に最終運行を迎えたばかりだけに感慨深い。

 189系の高い位置にある運転席からの眺望を再現しており、マスコンレバーを手前に引いて八王子を出発すると見晴らしの良さに感動を覚える。途中の停車駅は立川だけで、画面右上の枠内に少し先に通る区間の制限時速を表示するという「初期作品が難しすぎるとの声を受けた改善策」(タイトー関係者)の恩恵もあり、途中で時速120キロといった高速運転を満喫できる。

 途中停車駅の立川を出発してしばらく経過すると、普段見慣れている景色と異なっているのに気付いた。本作品は03年10月のデータに基づいているため、14年3月に完成した三鷹―立川の連続立体交差化になる前の三鷹まで地上区間が続いていた風景を再現しているのだ。

 かつて乗車時に目にしていた景色が記憶によみがえってくるのは楽しく、映し出されるCGは高架化工事が進んでいた段階線路沿いの所々に立っている作業員に警笛を鳴らせば得点が入るチャンスも用意されており、気分よく“快走”できた。

 主力の快速電車で現れるのが、車体全体をオレンジ色で塗り、省エネルギーが持ち味の通勤電車201系なのもうれしい。旧国鉄時代の1979年に試作車が登場すると、「国電」と呼ばれた国鉄時代の通勤電車のイメージを覆す斬新なデザインが注目を浴びた。

(上)「電車でGO!プラグ・アンド・プレー」のゲーム機(タイトー提供)、(下)車両同士の連結に成功すると加点されるボーナスゲームも用意
(上)「電車でGO!プラグ・アンド・プレー」のゲーム機(タイトー提供)、(下)車両同士の連結に成功すると加点されるボーナスゲームも用意

 幼稚園児だった私は他の鉄道ファンとともに運転席後ろの窓に張り付いていると、運転士は大勢からの“監視”を嫌がって窓のブラインドを猛烈な勢いで閉じた。日中の地上区間を走行中に閉じるのは禁じ手で、「親方日の丸」の国鉄に対応が悪い職員がいることを実感した一幕だった。「電車でGO!プラグ・アンド・プレー」の運転台に張り付けば、視界を遮られる心配も無用だ(笑)。

 ゲームは乗務の“報酬”としてポイントをもらえ、得点を使ってメニューの中から運転したい区間を“購入”する。

 今年3月17日のダイヤ改正で新宿―松本(長野県)を結ぶ特急「スーパーあずさ」を新型車両E353系(https://this.kiji.is/310672236993578081)に統一するのに伴って全て引退するE351系や、特急「成田エクスプレス」の初代車両253系も用意され、速度計の形状や、ブレーキの掛かり具合といった操作感がそれぞれ異なるのが味わい深い。

 「子鉄」である小学生の息子の手も借りながら「全線走破」を重ねると、当初メニューには車両と区間が表示されていない秘密の扉が開いた…。

 親子の協働で“路線開拓”を重ねた後、息子がデモ機を見つめて「返した後に、買ってくれるよね」と漏らした。「電車でGO!」最新版はどこでも遊べるだけでなく、民謡「線路は続くよどこまでも」のようにどこまでも遊びたくなる魅力が詰まっていた。

 ☆大塚 圭一郎(おおつか・けいいちろう)共同通信社経済部次長。「電車でGO!ファイナル」の発売を2004年3月に他社に先駆けて報じた際、記事の冒頭は「人気の鉄道ゲームが終着駅へ」でした。しかし、私の「電車でGO!」への熱意はまだ爆走中です!