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47リポーターズ

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整列乗車はコラボレーション

2013.5.17 10:25
 来た電車に乗り込む人、次の電車を待つ人…。「3列に並んでお待ちくださーい」=銀座線表参道駅
 来た電車に乗り込む人、次の電車を待つ人…。「3列に並んでお待ちくださーい」=銀座線表参道駅

 4月になると通勤電車のお客さんががらりと変わる。新しいスーツに身を包んだ新社会人が行き交い、ういういしいランドセルの小学生もちらほら目にする。

 振り返ってみれば、私は今から30年以上前、高校に入学して電車通学を始めた。小さいころから鉄道が好きだったけれど、満員電車に揺られ、計1時間かかる通学時間はかなりしんどかった。毎日ほうほうの体で学校にたどり着いていた。まあ、慣れてきたら複雑なダイヤを読み解いて、すいた電車を予測したりしたものだけど。

 それにしても2~3分に1本の電車が次々と客を降ろし、客を乗せ、発車していくのは、日本の鉄道の最大の特色だろうと思う。定時運行は世界でもトップレベル。というより、こんなに正確な運行は日本以外ではあり得ない。

 正確無比な運行は、鉄道会社と乗客のコラボレーションによるものだ。いくら鉄道会社が時間通りに運行しようと思っても、乗客の協力がなければうまくいくはずがない。

 そんなことを考えるのも、毎日地下鉄の駅で「整列乗車」をしているから。電車通学・通勤歴30年、整列乗車に思うところは多い。

 乗客が整列乗車に協力しようとする最大の動機は「座れること」だろうか。夕方のラッシュ時、都心から郊外へ帰る客が乗り込むターミナルは、限られた座席を目指して電車を待つ人であふれる。ドアが開くと一斉に車内になだれ込んだ人々が素早く席を確保する。キョロキョロしている暇はない。一瞬の躊躇も許されないのだ。

 降りた人が進む方向、乗る人が進む方向が示されている=東急東横線・副都心線渋谷駅
 降りた人が進む方向、乗る人が進む方向が示されている=東急東横線・副都心線渋谷駅

 朝は途中駅から乗る人も多いだろう。座る席を求めて、というより、少しでもいいポジションを求めて、という方が正しいかもしれない。そもそも運転間隔は朝の方が短いから、少しでも混乱なく乗り降りするには整列乗車は欠かせない。

  歴史をひもとくと、はっきりしたところでは終戦直後の地下鉄渋谷駅にさかのぼるのだとか。帝都高速度交通営団(現在の東京メトロ)の「営団五十年史」によると、当時の渋谷駅の混雑ぶりは殺人的で、駅員が客を一人一人説得して協力を求めていったという。

 その苦労や、いかばかりか。今でも、ズルをする人、横入りする人(なんか子どもっぽい表現ですね)には、周囲の厳しい目が注がれるが、面と向かって注意するのははばかられる。あの殺伐とした時代ではさぞ大変なことだっただろうと思う。

 長い歴史の中で培われた整列乗車。春に電車通学・通勤にデビューされた方々もぜひその伝統を継いでほしい。(2013・5・3)

☆八代 到(やしろ・いたる)1964年東京生まれ。共同通信社文化部勤務。長距離列車にも整列乗車はつきもの。大まかな停車位置しか駅に示されていない海外の鉄道では、苦労することが多いですね。